おはようございます。
さて、今日は、事業場外みなし労働時間制についての新しい裁判例を見てみましょう。
阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第1)事件(東京地裁平成22年5月11日・労判1008号91頁)
【事案の概要】
Y社は、旅行その他旅行関連事業を行うことを等を業とする会社である。
Xは、Y社の派遣添乗員として、阪急交通社に派遣され、同社の国内旅行添乗業務に従事している。
Y社では、派遣添乗員につき、事業場外みなし労働時間制が採用されている。
Xは、Y社に対し、未払時間外割増賃金、付加金等を求めた。
【裁判所の判断】
事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。
付加金として、割増賃金と同額を認容した。
【判例のポイント】
1 Y社は派遣添乗員に対しY社作成にかかる国内添乗マニュアルを交付して、派遣添乗員の業務について詳細に説明・指示している。
2 派遣先の阪急交通社から渡される行程表ないし指示書によってツアーの旅行管理がされる。
3 ツアー当日はモーニングコールをして添乗員の遅刻を防ぐ措置を講じ、添乗員からも連絡をさせている。
4 派遣添乗員が提出する派遣報告書ないし添乗日報には、行程記入欄に着時刻、発時刻を分単位で記入することが求められ、また、夕食、朝食が宴会か、バイキングかも記入することになっている。
5 派遣先旅行会社は全添乗員にツアー毎に携帯電話を貸与し随時電源を入れておくよう指示されている。
6 Y社は派遣添乗員の深夜割増賃金を支給するときには添乗報告書等を参考にしている。
7 Y社及び阪急交通社は、国内旅行について、試験的という位置づけではあるが、自己申告により就労時間の把握をした取り組みを開始している。
8 これらの事実からすると、添乗員が立ち寄り予定地を立ち寄る順番、各場所で滞在する時刻についてある程度の裁量があるとしても、Y社が、添乗員の添乗報告書や添乗日報、携帯電話による確認等を総合して、派遣添乗員の労働時間を把握することは社会通念上可能であるというのが相当である。
個人的には、上記2、4、5が決め手になっているように思います。
1番の「国内添乗マニュアル」がどのようなものかわかりませんが、一般的なマニュアル書であるならば、就労時間の把握には関係ないように思います。
3番も、あまり関係ないように思いますが・・・。
なお、この事案では、付加金について満額認められています。
付加金についての裁判所の判断は以下のとおりです。
「Y社は、Xを含む派遣添乗員の就労について労基法38条の2の適用はないとする労働基準監督署の指導に従っていないし、国内旅行について就労時間の把握をしようとしているけれども、いまだ「試験的」という位置づけを崩していないから、労基法37条に従った過去分の割増賃金を支払う姿勢があるともいえない。したがって、労基法114条に基づき、Y社に対し、付加金の支払を命ずるのが相当である。」
労基署の指導に従わないと、付加金の支払いを命じられるリスクがありますので、ご注意を。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。