おはようございます。
今日は、会社工場の周辺住民の健康被害に対する補償問題などが義務的団交事項に当たるかが争われた事例を見てみましょう。
リソルホールディングス事件(埼玉県労委平成29年4月13日・労判1156号90頁)
【事案の概要】
本件は、会社工場の周辺住民の健康被害に対する補償問題などが義務的団交事項に当たるかが争われた事例である。
【労働委員会の判断】
義務的団交事項にあたらない
【命令のポイント】
1 アスベストが、いわゆるクボタショックにみられるようにアスベスト製品製造工場の周辺住民にも健康被害を及ぼすおそれのある物質であることから、組合が、Y社に対して、Aら旧大宮工場の周辺住民への補償を求めることは理解できなくはない。
しかしながら、労働委員会が扱う不当労働行為救済制度が、労働者の労働条件に係る交渉について、労働組合と使用者との対等な関係を保障するためにあることからすれば、労組法上の「雇用」とは、会社との労働契約関係に近似ないし隣接する関係のことを意味するというべきである。
そうすると、旧大宮工場の周辺に居住していたにすぎない者は、Y社との関係において、労働契約関係に近似ないし隣接する者とはいえない。
また、旧大宮工場の周辺住民に金銭補償を行うか否かは、元従業員の未精算の労働条件とは全く別の問題である。
2 したがって、「旧大宮工場の周辺住民被害者」は労組法第7条第2号にいう「使用者が雇用する労働者」には当たらず、「周辺住民被害者」の企業補償に関する事項は義務的団交事項には該当しない。
異論のないところだと思います。
義務的団交事項を理解するにはわかりやすい例ではないでしょうか。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。