おはようございます。
さて、今日は、労働組合の街宣活動等の禁止に関する仮処分決定を見てみましょう。
ミトミ建材センターほか事件(大阪地裁平成24年9月12日・労経速2161号3頁)
【事案の概要】
Y社は、土木工事及び建築工事の請負並びに設計施工等を目的とする会社である。
本件は、Y社らが、X組合に対し、X組合が、Y社の生コン納入現場付近、Y社が受注する工事現場周辺、Y社代表者Aの自宅付近で、街頭宣伝活動やシュプレヒコール等を行ったことにより、Y社らの営業権や人格権が侵害されたとして、X組合の行う街宣活動等の禁止を求める仮処分命令を申し立てたところ、これを認容する原決定がなされたのに対し、X組合が、X組合が行っている街宣活動等は、労働組合活動の一環として行われているもので適法な行為であるなどと主張して、異議を申し立てた事案である。
【裁判所の判断】
労働組合の街宣活動等の禁止を求める仮処分命令には理由があるとして認可した
【決定のポイント】
1 労働組合は、組合員である労働者のために、その労働条件をはじめとする経済的地位の維持・向上を目指して活動することが許されており、その活動が、組合活動として正当な範囲内にある限り、違法性は阻却される。そして、組合活動が正当なものとして許されるためには、その目的、態様、内容、使用者側が受ける不利益その他の事情を総合考慮し、社会通念上相当と認められることが必要であると解するのが相当である。
2 ・・・以上の事情を総合すると、X組合の行ったY社らに対する街宣活動は、少なくとも10回にわたって行われ、その内容もY社とその労働者との関係にとどまらず、Y社を違法業者と認定し、その公共事業に関することにまで及んでいる上、Y社に関連する工事現場の近くを何度も巡回する方法で行っているのであって、X組合の街宣活動は、社会通念上相当と認められる範囲を超えているといえる。したがって、X組合のY社等に対する街宣活動は、正当な組合活動と認められるものではなく、Y社等の営業活動を不当に妨害する行為であるというべきである。
3 上記において認定したX組合の街宣活動等の態様に加え、疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、X組合の街宣活動によってY社等の取引先が取引に躊躇していることがうかがえることも併せ考慮すると、X組合の街宣活動等によって、Y社等に著しい損害が生じ得るといえるので保全の必要性は認められる。
本件では、労働組合からの異議申立てが認められず、差し止めの仮処分が認可されました。
取引先等別企業に対する街宣活動(二次的争議行為)と経営者の私邸付近での街宣活動については、組合活動の正当性が否定される傾向にあります。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。