おはようございます。
さて、今日は、組合活動を理由とする雇止めと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
健創庵事件(奈良県労委平成24年9月27日・労判1057号169頁)
【事案の概要】
Y社は、個人経営の整体施術院で、整体・足つぼマッサージ店等の経営を事業目的とする会社である。
平成22年春頃、Xの勤務態度に問題があるとして、Y社はこれまで60%であった歩合を45~50%に変更する旨をXに告げた。
その後、Xは組合に加入し、組合は、Y社に対して、団交を申し入れた。
平成23年4月、Y社は、Xに次年度の業務委託契約を更新しない旨の書類に署名するよう求めた。
Xは、Y社が雇止めにしたことは、Xが組合に加入し、組合の正当な行為をしたことを理由とする労組法7条1号の不利益取扱いにあたるとして争った。
【労働委員会の判断】
雇止めは不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 Xは、(1)Y社の業務の遂行に不可欠な労働力として、事業組織に組み込まれていたこと、(2)労務の内容を一方的・定型的に決められていたこと、(3)労働の対価として報酬を受けていたこと、(4)業務依頼の諾否の自由も制約を受けていたこと、(5)指揮監督を受け、時間的・場所的拘束を受けていたこと、(6)事業者性があるといえないことから、Y社との関係において、労組法上の労働者であると認めるのが相当である。
2 X組合員の行為は、確かに、業務態度に問題があったことは認められるが、X組合員のそのような行為によって業績不振に陥ったと認めることはできないし、Y社が雇止めの理由に挙げた業務中の問題行為の後にも契約を更新していること、女性従業員の退職問題の解決にはY社も協力していることが認められること、待機時間中に漫画本を読んだり、パソコン・ゲームをしていたことはXが主張するように業務態度ではなく、待機時間中の過ごし方の問題でもあることから、X組合員の行為を理由とした雇止めには、必要性を認めることはできない。
3 上記のとおり、Y社による雇止めの合理性の有無および雇止め時の労使事情について検討した結果、本件雇止めについてY社に不当労働行為意思があったと認めざるを得ない。
4 当委員会は、Y社のX組合員に対する雇止めについて、不当労働行為の成立を認めるが、同人の契約期間が1年であること、同人は過去に2回自己都合により退職し、また、団交では退職を前提として未払い賃金等の支払を求めており、Y社に対し長期の雇用を期待していたとは認められないことに鑑み、X組合員に対する平成23年6月付け雇止めがなかったものとして取り扱うとともに、本件雇止めになる前の1年間の賃金額に年6%を乗じて得た金額を付与した金額を支払うこと、および本命令書受領後速やかに誓約文をXに交付することを命じることをもって相当であると思料する。
上記判例のポイント2の認定は、参考になりますね。
会社としては、突然、団交を求められても、不慣れのため、適切な対応をすることができない場合もあると思います。
あまり表面的なテクニックに走らず、誠意をもって団交に応じるのがよろしいかと思います。
最近では、団交に関する本もいろいろ出版されていますが、いつの時代も基本となる注意点だけを理解すれば足りるというのが私の考えです。
ちゃんと会社の立場、考えを伝えればよいのです。
これは組合側も同じことです。
お互いが誠意を持って話をすればよいのです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。