有期労働契約36(名古屋商工会議所事件)

おはようございます。

さて、今日は、中小企業診断士の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

名古屋商工会議所事件
(名古屋地裁平成24年8月21日・労経速2159号27頁)

【事案の概要】

中小企業診断士であるXは、中小企業再生支援業務を行う者として経済産業大臣の認定を受けた機関であるY社と業務委託契約(有効期間平成20年7月1日から平成21年3月31日)を交わして契約をし、以後同一契約での契約更新を経たが、Y社より平成23年3月28日、契約更新をせず同月末をもって本件契約関係が終了するとなる旨を告げられた。

Xは、本件契約は有期労働契約であって、契約の終了は雇止めであり、これを無効と主張し争った。

【裁判所の判断】

請求棄却
→本件契約は労働契約ではなく、業務委託(準委任)契約である。

【判例のポイント】

1 認定支援期間であるY社が国から委託を受けて支援業務部門において実施する窓口相談及び再生計画策定支援の業務は、中小企業の活力の再生を支援するための措置及び事業再生を円滑化するための措置等を講じることで我が国の産業活力の再生を図るとの特別措置法の目的を達成するため、中小企業者及び債権者(金融機関等)のいずれの代理人でもない中立公正な第三者としての立場で、事業再生にかかる中小企業者からの相談に対し、これを拒むことなく幅広く誠実に対応し、窓口相談の段階でも、専門的知見をもって、財務面さらに事業面での調査分析を行った上で、必要があると認める場合には、再生計画策定支援を行うものであるから、本件協議会及び支援業務部門は、中立公正な第三者として独立した立場を維持することが要請され、合わせて、協議会業務を実際に担当する個々の統括責任者及び統括責任者補佐も、中小企業の再生に関する専門家又は専門的知見を有する中小企業の再生に関する専門家又は専門的知見を有する中立公正な第三者として独立した立場で業務を遂行することが要請されるものと認められる。そうすると、支援業務部門の構成員である統括責任者及び統括責任者補佐は、各人が協議会業務として担当する具体的な案件について、Y社からの具体的な指揮命令を受けることなく、自らの専門的知見に基づく裁量的な判断に基づいて業務を遂行することが要請され、現に、Xにおいても、そのように業務を遂行していたものと推認される
したがって、本件契約は、実質においてもその契約形式のとおり、XがY社の労務指揮の下で協議会業務に従事するという労働契約ではなく、自らの専門的知見に基づく裁量的な判断に基づいて、委託された協議会業務を遂行する業務委託(準委任)契約であると解することができる

2 本件契約上、勤務場所の限定、勤務場所の指定が存在し、Xの業務遂行の場所的・時間的拘束があるものの、これは、委託を受けた協議会業務の性質上、窓口相談を受けるべき場所的・時間的制約が生じること、また、担当案件に関する資料の存在と当該企業の経営状況等の秘密保持の必要性から場所的制約が生じることにより要請されるものであって、X・Y社間の使用従属関係を肯定させるものではない。そして、本件契約上、出勤日については、235日以内と定められているのみであるから、具体的な出勤日の決定や当該日における業務遂行の段取りは、担当案件を適正に処理する必要から一定の制約は当然あるものの、統括責任者の承諾や決裁なしにXの裁量で決めることが可能(Xは、協議会業務とは別に、中小企業診断士として自己の業務を行うことが可能な有資格者であり、本件契約において、拘束時間外に協議会業務以外の自己の業務を行うことは何ら制限されておらず、仮に自己の業務等による差し支えがある場合には、協議会業務との日程調整も可能)な体制にあったと推認される

労働契約か業務委託(準委任)契約かが争われた事案です。

原告が中小企業診断士だから労働契約ではない、とまで単純化することはさすがにできませんが、士業ですから、被告との間で、使用従属関係があったかはやはり難しいのではないかというのが率直な感想です。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。