セクハラ・パワハラ28 自宅待機期間中の給与を平均賃金の6割とすることの是非(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、セクハラ行為に基づく懲戒解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ほけんの窓口グループ事件(大阪地裁平成28年12月15日・労判ジャーナル61号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、女性従業員に対するセクハラ行為を理由として、懲戒解雇処分を受けたため、Xが、かかる行為はしておらず、同処分は無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、平成26年12月以降の賃金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇無効確認請求は棄却

未払賃金等支払請求は一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、女性従業員に対し、平成25年11月、マフラーで首を絞めて駐車場の奥まで引きずり、キスをするというセクハラ行為に及んだもので、その態様は粗暴かつ悪質で、刑事犯にも該当しうる行為である上、Xは平成23年12月及び平成24年7月にも深夜の公園や路上で女性従業員に無理矢理キスをするというセクハラ行為に及び、さらに、平成24年8月にも午後11時頃に女性従業員を公園に連れて行こうとしたのであり、このようなXの一連の行為が、就業規則の懲戒解雇事由に該当することは明らかであるところ、上記態様の悪質性やセクハラ行為の回数のほか、XがY社による調査を受けても、セクハラ行為そのものをすべて否認し、Y社や女性従業員に対する謝罪や反省の態度を一切示していなかったことにも鑑みれば、Y社がXを懲戒解雇処分としたことについては相当性があると認められ、本件懲戒解雇処分は有効であるから、XのY社に対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求及び本件懲戒解雇処分後の賃金請求についてはいずれも理由がない。

2 一般論として、自宅待機命令は、使用者が、労働者に対し、一方的に就業を禁止するものであるから、使用者は、民法536条2項により、その間の賃金支払義務を負う場合が多いものと解されるが、民法536条2項は任意規定であり、就業規則でこれと異なる規定を置くことは排除するものではなく、就業規則49条2項は、従業員の行為が懲戒事由に該当するおそれがある場合に、その調査や懲戒処分の決定に必要な期間に限り自宅待機命令をし、その間の賃金を平均賃金の6割とするものであって、就労を許容しないことに実質的な理由がある場合に限定されており、その期間も限定されていること、その金額も労働基準法26条の休業手当と同額であることに鑑みれば、同規定には合理性があると認められる。

上記判例のポイント2は参考になりますね。

もっとも、現行の制度を変更する場合には、不利益変更となりますので、そう簡単にはできませんが。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。