解雇232 試用期間中の解雇の有効性はどのように判断される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、問題点の改善の見込みが乏しく、試用期間中の解雇が有効とされた事例を見てみましょう。

まぐまぐ事件(東京地裁平成28年9月21日・労経速2305号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、試用期間中に留保解約権の行使により解雇されたところ、Y社に対し、本件解雇の無効を主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後の未払賃金104万4395円+遅延損害金等を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・このように、Xには上司の指導や指示に従わず、また上司の了解を得ることなく独断で行動に出るなど、協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動により取引先や同僚を困惑させることなどの問題点が認められ、それを改めるべくY社代表者が指導するも、その直後に再度上司の指示に素直に従わないといった行動に出ていることに加え、上記の問題点に対するXの認識が不十分で改善の見込みが乏しいと認められることなどを踏まえると、試用期間中の4月10日の時点において、Y社が「技能、資質、勤務態度(成績)若しくは健康状態等が劣り継続して雇用することが困難である」(就業規則15条3項)と判断して、Xを解雇したことはやむを得ないと認められ、本件解雇には、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当というべきである。

2 これに対し、Xは、Y社がXに対する指導のために特命チームへの配属を予定していたのであれば、平成27年5月1日の配属予定を前倒ししてでも、Y社代表者がXを直接指導すべきであったなどとして、Y社が解雇回避努力義務を怠った旨主張する。
しかしながら、前記で説示したとおり、使用者が雇用契約に試用期間を設け解約権を留保する趣旨は、採用時には認識し得なかった労働者の資質、性格、能力その他の適格性を観察し、最終的な採否(本採用)を見極めるためのものであるから、試用期間中の留保解約権行使による解雇は、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められ、Y社の負う解雇回避努力義務の程度も、通常の解雇の場合ほどには要求されないというべきである。
そして、3月20日の面談でY社代表者から他者との協調性について改めて指導されたにもかかわらず、Xがそのわずか4日後に上司のDからの指示を素直に受け入れず反抗的な態度を取っており、かかるXの非協調的な態度は改善の余地が乏しいと認めざるを得ないことに加え、XがY社入社までに約7年間の社会人経験を経ていることなどを踏まえると、試用期間完了時までXに対する指導を継続しなかったことをもって相当性を欠くとまではいえないから、Xの上記主張は採用できない。

勤務態度が悪いであったり、協調性がないなどという理由で解雇する場合には、裁判所に具体的にわかるように主張立証することがとても大切です。

訴訟の前の準備段階で8割がた勝負が決まっていると言っても過言ではありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。