セクハラ・パワハラ27 パワハラ事案で慰謝料400万円が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワハラを理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

コンビニエース事件(東京地裁平成28年12月20日・労判1156号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営するコンビニ店舗で平成22年9月から平成23年12月26日までの間勤務していたXが、その勤務期間中に、Y社の代表者であったA及び前記店舗の店長であったBから、暴行、サービス残業の強要等のいじめ・パワーハラスメントを日常的に受けたと主張して、Y社らに対し、損害賠償等として3287万3765円+遅延損害金等の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社及びAは、Xに対し、連帯して930万4211円+遅延損害金を支払え

Bは、Xに対し、910万4211円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、人とコミュニケーションをとるのが苦手であり、物事がうまくいかないとすぐ投げ出してしまうところもあって、本件3店舗でも、手順が悪かったり、仕事が遅かったりしたことがよくあったと認められ、このようなXに注意、指導をしようとしたのがきっかけになっていることもうかがわれるが、前記認定に係る事実は、いずれも適正な業務上の注意、指導の範疇を超え、暴力を伴うなど、相手方たるXに過度の心理的負荷を与えるものとして、いじめ・パワハラに当たり、不法行為を構成するというべきである。

2 本件では、1年数か月にわたっていじめ・パワハラが継続された上、その態様をみても、暴力的ないじめ・パワハラでは、身体に対する具体的な危険を伴うものがいくつもあり、右手の傷に関しては、具体的な後遺障害を認定するまでには至らず、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料や休業損害を認めることはできないものの、その結果は軽視できないし、その他の部位に対する暴行も含めて、場合によっては重大な結果を生じかねなかったことは否定し得ないのであって、非常に悪質である。精神的・経済的ないじめ・パワハラでも、商品を買い取らせるなど、様々な方法で経済的負担を強要したりしており、非常に悪質である。かかるいじめ・パワハラにより、Xが身体的にも、精神的にも多大な苦痛を被ったことは明らかであって、このほかに、具体的な損害としては算定し難い事柄など、本件に顕れている諸事情を総合考慮すると、個別に認めたもののほかに、慰謝料として400万円を認めるのが相当である。

パワハラ事案としては、非常に高額な慰謝料が認められています。

態様を見るかぎり、刑事責任も問われる可能性が高い事例です。

通常問題となる指導とパワハラの区別のような限界事例とは程遠いケースです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。