不当労働行為58(横浜自動車学校事件)

おはようございます 

さて、今日は、スト予定日に出勤した組合員に対する賃金控除と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

横浜自動車学校事件(神奈川県労委平成24年8月8日・労判1055号94頁)

【事案の概要】

X組合は、Y社に対し、平成22年6月、次回団交で誠意ある回答がない場合は24時間ストを行う旨通告した。

また、X組合は、Y社に対し、次回の団交次第でストを回避する可能性もあると伝えた。

他方、Y社は、スト予定日に教習予定の教習生にキャンセルの電話連絡を開始し、X組合に対し、スト回避の通告を受けても、組合員の就労は認められないと伝えた。

X組合は、ストの前日、Y社にスト回避を通告した。しかし、Y社は、ストの前日回避は認められないとするとともに、キャンセルした教習生に組合員らが教習予約の電話をかけるなら、組合員の就労を認めると提案し(組合は、これに応じなかった)、さらに、同日夕刻、組合員31名の業務を「不就業」と記載した「勤務スケジュール表」を掲示した。

Y社は、スト予定日に出勤し業務を割り当てなかった組合員の同日分の賃金を控除した給与を支給した。

【労働委員会の判断】

賃金控除は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件の場合は、確かにY社の今後の信用に関わるものとして、ストライキ当日の教習生のキャンセル作業を行ったことは不適切とはいえないとしても、それとストライキ回避後の組合員の就労を拒否することは別個の問題である。ストライキ当日に教習生が来校しない以上、Y社は組合員の就労を受け入れる意味がないとしても、それはY社のリスク回避の判断の結果であって、就労を拒絶する合理的な理由とはならないY社としては、組合員を受け入れて他の業務に就かせることも可能であり、仮に業務がなく賃金支払という負担だけが発生したとしても、それはY社の判断の結果として本来Y社が負うべきリスクがあり、組合員に負わせるべきものではない

2 なるほど、Y社は、組合がストライキ回避を通告した後に、組合に対して教習生への電話がけを手伝ってくれたら就労が可能となり得る旨を伝えているが、Y社の電話回線は8本しかなく、実際にストライキ回避後に組合員の協力を得て約150名の教習生に対し再予約の連絡をしたとしても、それ以前のY社による教習生へのキャンセルの連絡が12時間かかったという事実に鑑みれば、実際上の再予約は不可能だったといわざるを得ない。

3 以上のことからすれば、Y社による本件就労拒絶は、本来Y社が負担すべき組合員の就労受入れによる賃金支払を免れ、賃金喪失の不利益を組合員に負わせることを意図して就労を拒否するという、本件ストライキを計画したことに対する報復的な性格を否定できず、組合組織に打撃を与えることを意図して行われた不当労働行為に当たるといわざるを得ない

会社としては、とても厳しい判断です。

なかなか納得できないかもしれませんね。

教習生が来校しないときに、他の業務に就かせることも可能といいますが、実際、どんな業務があったのでしょうか? 

清掃とか・・・? 本来の予定されている業務でなくても、通常と同額の給与を支給しなければならないのでは、会社は納得できないでしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。