不当労働行為159 複数の組合が存在する場合における使用者の中立保持義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合事務所不貸与と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

神戸ヤマト運輸事件(兵庫県労委平成28年8月18日・労判1141号90頁)

【事案の概要】

本件は、本社の新社屋移転に際し、G労組に組合事務所に貸与しながら、X労組に貸与しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 使用者は、労働組合に対して当然に組合事務所を貸与する義務を負うものではないが、同一会社内に複数の労働組合が併存している場合には、組合事務所の貸与という便宜供与においても、労働組合の自主性を損なわない限りにおいて、各労働組合を平等に取り扱うことが求められている。そして、使用者が一方の労働組合に対して組合事務所を貸与しておきながら、他方の労働組合に対して組合事務所を貸与しないことは、合理的理由のない限り、他方の労働組合の活動力を低下させ、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものである。

2 本件のように、併存する二つの労働組合が双方とも組合事務所の貸与を求めている状況下においては、会社は、双方の労働組合を平等に取り扱うべきところ、当初はいずれの組合にも組合事務所として貸与する部屋がないと回答しておきながら、その後、X組合に事前に説明することなく、G組合にのみ組合事務所を貸与するに至った経緯からすると、Y社が主張する、本社移転前から継続して組合事務所を貸与していたG労組に対して優先的に貸与したとの理由付けは説得力に乏しい。

上記命令のポイント1をよく理解しておく必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。