解雇83(国(在日米軍従業員)事件)

おはようございます。

さて、今日は、傷病休暇期間満了による解雇に関する裁判例を見てみましょう。

国(在日米軍従業員)事件(東京地裁平成23年3月9日・労判1052号89頁)

【事案の概要】

Xは、傷病休暇を取得したが、休職期間満了時、職場復帰可能と判断しなかったYは、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 本件基本労務契約によれば、有給休暇を消費した後に、労働者の業務外の傷病による傷病休暇(無給)は1年6か月間認められ、X・Y間の労働契約は、Yによる解雇予告の手続を経ることにより、原則としてその最終日に終了するが、労働者が回復すれば、解雇予告の撤回を要求することができ、Yは、Xを勤務に戻すと定められている。そうすると、労働者が業務外の傷病により、1年6か月間の傷病休暇(無給)を取得した場合は、Yがその最終日に有効となる解雇予告をして、労働契約の終了を主張・立証するのが抗弁となり、労働者が、再抗弁として、復職を申し入れ、回復して就労が可能になったことを立証したときは、労働契約の終了という法的効果が妨げられるという攻撃防御方法の構造であると解すべきである。これは、労働契約上の傷病休暇の制度が、業務外の傷病による長期間に及ぶ労務の提供を受けられない状況に対する解雇猶予を目的とする制度であるから、労働契約上の猶予期間が終了することで、労働を終了とし得ることが原則となると考えるのが相当であること、Xは、本件訴訟の段階でカルテの証拠化を拒否しており、個人情報保護の観点からしても、労働者個人の健康状態に関する情報は、原則として当該労働者個人の支配領域にある情報であることという事情を考慮すれば、労働者に回復して就労可能であることの立証責任を負わせるのが合理的であるということができる。

2 そうすると、Xは、労働契約上猶予されている傷病休暇(無給)の終了日までに、復職することをYに申し入れ、回復して就労が可能になったことを客観的証拠を示す等して立証することになる。そして、・・・本件争点は、Xが、無給の傷病休暇の最終日までに自らが回復して就労可能な状態になったことを立証しているかという点に尽きることになる。

3 ・・・以上によれば、Xは、その立証責任を負う傷病休暇の休職理由が解消していることの立証を尽くしていないといわざるを得ず、そうすると、休職期間満了時に解雇するという内容の本件解雇は有効である

休職期間満了時のトラブルは、少なくありません。

会社側も、正直なところ、どのように対応してよいのかわからないのではないでしょうか。

この問題は、弁護士にとっても、簡単な問題ではありません。

本件裁判例では、健康状態が回復し、就労可能となったことについて、労働者側に立証責任を負わせるのが合理的であると判断しています。

参考にすべき点ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。