おはようございます 3連休も終わり、また1週間が始まりましたね。
今週もがんばっていきましょう!!
←3連休は、山にウォーキングに行きました
毎週末は、山登りから一日が始まります。
今日は、午前中は事務所の内装についての打合せと弁護士会での法律相談が入っています。
午後は、裁判が2件入っています。
夜は、弁護団会議です。
さて、今日は、長時間労働等による精神障害発症・死亡に関する裁判例を見てみましょう。
フォーカスシステムズ事件(東京高裁平成24年3月22日・労判1051号40頁)
【事案の概要】
X(死亡時25歳)は、平成15年4月にY社にシステムエンジニアとして採用され、通信ネットワーク関係のシステム設計、構築および運用試験等の業務に従事していたが、18年7月に異動となり、携帯電話端末の組み込みソフト開発チームの所属となった。
Xは当初ベテランの従業員と組み、調査検討業務等に従事していたが、改修や再試験実施に手間取った結果、当初引渡し予定であった8月中旬時点で、予定の業務の30%程度しか進行せず、その結果Xの残業時間も増加していった。
同年9月、Xは自宅から都内にある勤務地に出勤するかのように出かけたが、携帯電話の電源を切って、無断で欠勤して河川敷のベンチでビール等をラッパ飲みし、意識不明で倒れているところを発見されたが、すでに心配停止状態で死亡していることが確認された。
Xの死亡について、中央労基署長は業務災害と認定して、遺族補償年金等を支給している。
【裁判所の判断】
Y社の安全配慮義務違反を認めた
→約4400万円の支払いを命じた
【判例のポイント】
1 当裁判所も、Xは、長時間労働、配置転換に伴う業務内容の変化・業務量の増加等の業務に起因する心理的負荷等が過度に蓄積したために精神障害(うつ病及び解離性逓走)を発症し、正常な認識と行為の選択が著しく阻害された状態で過度の飲酒行為に及んだため急性アルコール中毒から心停止に至り死亡したものであり、使用者であるY社の代理監督者は、Xの従事していた業務が上記精神障害を発症するなど心身の健康を損ねるおそれのある状態にあることを認識し又は認識し得たにもかかわらず、心理的負荷等を軽減させる措置を採らなかったことから、従業員に対する安全配慮の義務に違反しているものと認められ、このような従業員の心身の健康に配慮すべき義務は、使用者として尽くすべき一般的注意義務になると解されるから、Y社は不法行為(使用者責任)に基づきこれにより発生した損害を賠償する責任があると判断する。
2 ・・・これらによれば、長時間の時間外労働と精神障害との一般的関連性は認められるところ、本件では、Xの時間外労働は本件当日前2か月間においていずれも100時間を超えているのみならず、配置転換に伴う業務内容の変化・業務量の増大、単体試験業務専任となることの心理的影響などにより相当重大な心理的負荷が生じ、蓄積しており、それらのことがXの行動や表情に表れているのであって、そのような状態にあった中で本件当日の飲酒行為に及んだのである。そして、これらの一連の出来事に基づいて精神医学の知見からXの従事していた業務と精神障害の発症及び飲酒行為との間には因果関係があるとする天笠医師の意見には十分合理性がある。そして、Xが精神障害を発症する原因は他に考えられないことをも併せ考慮すると、Xの従事していた業務による心理的負荷とその精神障害の発症との間には強い関連性があると認められる。
3 ・・・他方において、Xの長時間労働は恒常的なものであり、必然的に睡眠時間の不足も日常的なものとなるから、就労後の時間を適切に使用し、できるだけ睡眠不足を解消するよう努めるべきであったところ、就寝前にブログやゲームに時間を費やしたのは、自ら精神障害の要因となる睡眠不足を増長させたことになり、その落ち度は軽視できないものである。
・・・以上の観点のうち、Xにおいても、自らの趣味のために睡眠不足を招いたことは、それが心身の健康を損ねる大きな要因であることから、自己の意思によって健康管理に努めるべきであったと指摘することも可能であり、この点はXの落ち度として相応の考慮をせざるを得ないのであり、その他第1審原告らに生じた損害の全てについてY社にその責めを負わせるのは損害の分配における公平の観点からは相当でなく、第1審原告らに3割の過失割合を認め、上記損害を減ずるのが相当である。
時間外労働時間が100時間を超えていることのみから、会社の責任を問われてもおかしくありません。
本件は、労働者に3割の過失相殺が認められてはいますが、会社は4000万円を超える損害を賠償する責任を負うことになりました。
長時間労働については、くれぐれも注意しましょう。