おはようございます。
今日は、元トラック運転手による割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。
富士運輸(割増賃金等)事件(東京高裁平成27年12月24日・労判1137号42頁)
【事案の概要】
本件は、自動車(トラック)運転手としてY社に雇用されていたXが、Y社に対し、雇用期間中の平成22年6月1日から平成24年2月29日までの間における時間外労働、深夜労働及び休日労働に係る割増賃金の未払額が合計721万4468円あると主張して、同未払額のうちの661万9657円+遅延損害金、同額の付加金+遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は、Xの賃金等に関する労働条件はY社の就業規則及び賃金規程に定める内容のものであり、これらの定めによれば、Xの賃金は固定給と歩合給から成り、Xに月々支給された各種割増手当及び加算手当は割増賃金の支払であって、本件請求期間の各月に支払われたその各額は対応する各月に発生した割増賃金額よりも多いから、Xに対する未払の割増賃金は存在しないと認定判断して、Xの請求をいずれも棄却した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 ・・・上記協定書には、同制度(1か月単位の変形労働時間性)を実施するための要件である変形期間となる1か月以内の一定の期間の特定(労基法32条の2、施行規則12条の2第1項)がなく、また、Y社のE支店では、同制度の適用を受けるトラック運転手に対し、業務シフト表を作成してこれを予め示すことをしておらず、運行業務に就く前日又は当日に配車担当職員からトラック運転手に配車を指示するという取扱いをしていることからすると、トラック運転手の労働実態は、1か月単位の変形労働時間制が実施されているとは認められないというべきである。したがって、Xについては、変形労働時間制の適用はなく、その割増賃金は労基法37条に基づいて算定することになる。
2 ・・・上記各手当のうちの有給休暇手当を除く皆勤手当、待機手当、空車回送手当、その他諸手当、携帯電話手当及び講習手当は、いずれも、歩合給でも割増賃金でもなく、また、労基法37条5項及び施行規則21条に定める割増賃金の基礎となる賃金の算定において算入されない賃金にも当たらないものであり、かつ、通勤手当のように実費を補てんする手当とも異なるから、固定給に係る割増賃金の基礎となる賃金に算入される賃金であると解するのが相当である。
3 Y社の賃金体系が基本給及び歩合給の合計額よりも各種割増手当及び加算手当の合計額の方が大きいものであることを理由として合理性を欠くという主張及びY社の賃金体系が100時間以上の時間外労働を恒常化させるものであることを理由としてY社の賃金体系が労基法37条の趣旨に反するという主張については、割増賃金に関する規定以外の労基法の規定や他の労働関係法令との関係で問題となり得る可能性があることはともかく、Xが支払を受けていない割増賃金があるかどうかの判断に直接影響を及ぼす主張ではない。
たくさんの手当が出ている場合、固定残業代と認められないと、割増賃金の基礎賃金と判断されてしまいます。
そうなると、自ずと、金額は高額になってしまいます。
気をつけましょう。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。