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今日は、バス助役の仮眠時間につき労基法上の労働時間に当たらないとされた裁判例を見てみましょう。
阪急バス事件(大阪地裁平成27年8月10日・労経速2281号9頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、バス助役として勤務しているXが、時間外労働を行ったが割増賃金が支払われていないとして、平成23年1月から同年11月までについてはY社の違法な労務管理によって損害を被ったとして不法行為に基づき、同年12月から平成25年9月までについては雇用契約に基づき、その支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、Xに対し、62万1341円+遅延損害金を支払え
Y社は、Xに対し、付加金として62万1341円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 確かに、助役は、最終バスの点呼を行い、門の施錠や構内の点検を終了した後から始発バスの準備までの間、伏尾台営業所の事務室内にある仮眠室で仮眠することとされていたのであるから、滞在場所については場所的な拘束がなされていたといえる。
また、確かに、助役が仮眠室に泊まり込むことで、何らかの緊急事態等が発生した場合には、迅速な対応をとることが可能となることからすれば、仮眠時間中においても、労務提供の可能性が皆無であったとまではいうことができない。
しかし、助役は、門の施錠や構内の点検終了後から、始発バスの準備までの間に、日常の業務として何らかの業務に従事することを求められていたわけではなく、実際のXら従業員の状況をも併せ考慮すると、門の施錠や構内の点検終了後から、始発バスの準備までの時間において、労働契約上の役務の提供が義務付けられていたと評価することは困難であり、仮眠時間中に、仮眠室においてすごしていた不活動仮眠時間については、原則として、労働からの解放が保障されており、労働契約上の役務の提供が義務付けられていなかったと評価することができる(なお、仮眠時間が労働時間に当たらないとしても、例外的に作業が必要となり、実際に作業に従事した時間については時間外労働として賃金の支払が必要となることは当然である。)。
したがって、本件における仮眠時間について、労基法上の労働時間に当たると認めることはできない。
2 Xが主張する損害は未払賃金相当額であるところ、Y社がXの労働時間を適正に把握しておらず、その結果、Xの割増賃金について一部が未払となっていたとしても、Xとしては、正しい労働時間を前提とした割増賃金を計算し、未払となっている割増賃金の不払を請求することができるのであるから、割増賃金の一部が未払であることをもって、Y社が労基法上の罰則を受けたり、Xとの関係で債務不履行責任を負うことはともかく、Xとの関係で直ちに不法行為を構成すると解することはできない。
約461万円の請求に対して約62万円という結論です(付加金も同額認められています)。
大星ビル管理事件最高裁判決の考え方を踏襲しています。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。