不当労働行為48(ブリーズベイホテル事件)

おはようございます。

て、今日は、労組法上の使用者に関する命令を見てみましょう。

ブリーズベイホテル事件(中労委平成24年5月9日・労判1049号93頁)

【事案の概要】

Y社は、平成22年6月、Aホテルの土地建物を落札し、土地建物の所有権を取得し、A社の従業員(正社員50名、パート社員45名)のうち必要な人員を雇用して、遅くとも8月の盆前にはホテル事業を開始する意向であった。

A社の従業員は、全員の継続雇用が確保されない限り、Y社の雇用の呼びかけに応じないとし、平成22年7月、Aホテル労働組合およびA観光ホテル管理職組合に加盟した。

組合は、Y社に対し、A社従業員に提示している雇用契約期間及び賃金・身分等の労働条件を議題とする団交を申し入れた。

これに対し、Y社は、Y社と組合は直接やりとりする立場にないのでA社に連絡する旨、組合員とは雇用関係にないので団交に応じられないなどと伝えた。

【労働委員会の判断】

Y社は労組法上の使用者にあたらない
→団交拒否は不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 組合の組合員は本件団交申入れの時点においてA社の従業員であったのであり、同時点において、同人らとY社との間に雇用関係は成立していなかったことが認められる。

2 雇用関係に入るための前提条件については、Y社と、組合所属のA社の従業員らとの間には、雇用契約の締結に向けた交渉が開始するや否や、必要人員のみを採用するという意向と、全員の継続雇用という意向との間に大きな齟齬が生じていたのであり、しかも、その齟齬は、同従業員らが上記意向により入社説明会及び面接への応募を拒絶し、Y社もこれに応じて一般公募による採用方針へ切り替えたことによりさらに拡大していったと認められる。そして、本件団交申入れ当時のみならず、同団交申入れから近い将来においても、上記従業員及びY社の双方において、それらの隔絶した意向を変えて、双方が歩み寄る様子があったと認めることはできない

3 以上の事実を総合して考えれば、Y社と、組合所属のA社の従業員らとの間には、本件団交申入れの時点及びその前後を通じて、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたと認めることはできない

4 以上のほか、Y社が、本件団交申入れにつき、労組法第7条の使用者として団交に応ずべき地位にあると認めるに足りる証拠はない。

非常に参考になるケースですね。

初審労委は、Y社が団交に応じないことは不当労働行為であると判断しました。

雇用契約が成立していない場合であっても、それだけで不当労働行為に該当しないとはなりません。

「近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存していた」場合には、雇用契約が成立していない場合でも、不当労働行為に該当する場合があります。

今回のケースでは、そのような場合にはあたらないと判断されたわけですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。