おはようございます。
さて、今日は、組合員によるビラ配布を理由とする乗務停止処分等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
平成タクシー事件(広島県労委平成24年4月3日・労判1048号173頁)
【事案の概要】
平成22年9月及び10月、組合の組合員は、Y社が車両を待機させる場所において、Y社の労働条件などを記載したビラを通行人に配布した。また、組合は、10月の半月、ストを実施した。
同年11月、Y社は、組合員13名に対し、ビラ配布により業務を妨害したとして3日~11日間の無線配車停止または乗務停止の懲戒処分に付した。
同年12月、Y社社長Aは、副分会長Bに対し、無線室に連絡せずに個人受け(客から直接依頼を受けてタクシーでの送迎をすること)をしたことおよびタクシーを私的に使用したことについて始末書の提出を求め、Bは始末書を提出した。同月、Y社は、Bに対し、始末書の内容を理由に5乗務の乗務停止処分に付した。
【労働委員会の判断】
ビラ配布を理由とする乗務停止処分または無線配車停止処分は不当労働行為にあたる
会社タクシーの私的使用などを理由とする乗務停止処分は不当労働行為にはあたらない
【命令のポイント】
1 ビラ配布行為は、会社における労働条件の問題及び会社が不当労働行為を行っていることへの社会的関心を喚起することを目的とした行為であり、目的の観点から、組合活動としての正当性が認められる。
2 組合としては、前記の目的を最も効果的に果たし得るような場所をビラ配布の場所として選択することは当然のことであり、本件ビラ配布行為の場所の選択が、会社に一定程度の業務上の不利益を与えるものであったとしても、そのことをもって直ちに本件ビラ配布行為の正当性が損なわれるということはない。
3 また、本件ビラ配布行為を行うに当たって、組合員が一時的にアクロス等の敷地内に立ち入ったことを否定することはできないが、組合が敷地内への侵入について注意を払っていたことや、注意されて場所を移動したことなどに照らせば、本件ビラ配布行為の組合活動としての正当性を失わせる程に違法な行為があったとまでは認められない。
4 本件ビラ配布行為は正当な組合活動であると認められるところ、本件懲戒処分は、正当な組合活動に対して行われたものであり、また、本件ビラ配布行為のみならず、その後に行われたストライキに対する報復的意図も認められることから、反組合的な意図をもって行われた不利益な取扱いであると解するのが相当であり、労働組合法7条1号の不利益取扱いに該当する不当労働行為である。
5 個人受けについては、従前から禁止されており、実際に他にも個人受け禁止違反で懲戒処分を受けた乗務員がいたといった事情に照らせば、Bも、当然そのことを承知していたと推認され、これを覆す証拠はない。さらに、個人受け禁止に抵触した過去の同様の事例では、4乗務の無線廃車停止の懲戒処分があり、それとの均衡を考慮すれば、本件処分の程度が相当性を欠くものとまでは認められない。
以上のとおりであるから、本件処分に関し、会社がBに対して合理的な理由なく処分を行ったものとは認められず、本件処分は不当労働行為意思に基づいて行われたものとはいえない。
ビラ配布行為は、組合活動の基本ですが、会社側からすれば、営業場所でやられると困惑してしまうと思います。
しかし、正当な組合活動は、憲法上保障された権利ですので、正当な組合活動を行ったことを理由にその組合員たる従業員を処分すると、不当労働行為となります。
経営者としては、いかなる範囲の組合活動が正当とされているかについて知っておく必要があると思います。
感情的に処分をすると、あとで大変です。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。