おはようございます。
今日は、労組法上の労働者性、使用者性が争われた事案を見てみましょう。
東京航業研究所事件(東京都労委平成27年10月20日・労判1128号93頁)
【事案の概要】
本件は、(1)XらがY社との関係において、労組法上の労働者に、(2)Y社がXらとの関係において、労組法上の使用者に、ならびに(3)Y社が本件団体交渉申入れに応じなかったことが正当な理由のない団交拒否に、それぞれ当たるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にはあたらない
【命令のポイント】
1 X2は、会社の取締役であるとともに、整理室の主宰者として、会社と文化財整理業務の受注契約(業務請負契約)や建物賃貸借の契約を締結していたが、同人が会社との間で労働契約を締結した事実はなく、Xは、会社との委任契約に基づく取締役であり、かつ、外注先の事業者であったと認められる。
2 ・・・以上のとおり、労働者性を判断する諸要素を総合的に考慮しても、X2は、労働契約によって労務を供給する者又はそれに準じて団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる労務供給者には該当せず、会社との関係において、労組法上の労働者に当たるとはいえない。
3 X2の労働者性は認められず、また、会社は、X3らの使用者とは認められないのであるから、組合がX2らに関して申し入れた団体交渉について、会社に応諾義務があったということはできず、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。
使用者との雇用契約が存在しないことだけでは労組法上の労働者性、使用者性は否定されません。
実際、雇用契約が存在しなくても労組法上の労働者性、使用者性が認められているケースもあります。
本件ではハードルを越えることはできませんでした。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。