有期労働契約63(三洋電機(契約社員・雇止め)事件)

おはようございます。

今日は、約30回更新した後の事業譲渡等を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

三洋電機(契約社員・雇止め)事件(鳥取地裁平成27年10月16日・労判1128号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、Y社のXに対する解雇ないし雇止めは無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成25年4月から判決確定の日までの賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間の雇用契約は、約30年にわたり更新されてきたものの、契約期間満了の都度、雇用契約を締結し直すことにより、雇用契約を更新してきたことが認められるのであるから、本件の雇用契約を終了させることについて、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるとまでいうことは困難であり、労働契約法19条1号該当性は、これを否定せざるを得ないというべきである。

2 Xに生じた雇用契約の更新への合理的期待が生じ、かつ、これが消滅したとか大きく減弱したとかいうことはできなから、Xにおいて、雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるというべきであって、労働契約法19条2号該当性が認められる。

3 本件雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」といえるか(同法19条柱書)が問題となるところ、既に認定・検討したとおり、Xには、雇用契約の更新の合理的期待を有していたといえるし、本件雇用契約は、約30年にわたり更新されてきたものであるが、他方、その更新の大半において、Y社は、契約書を作成し直しているし、労働条件が変更するごとに契約書を作成しXに提示してきており、更新手続は厳格であって、契約書の文言上も、当然には更新することが予定されているとはいえないこと、Xが所属していたG事業部が人員余剰となり、Y社に事業移管されて鳥取地区から撤退するなど、Y社の鳥取地区における事業は縮小の一途をたどっていたことからして、雇用契約の更新に寄せられる期待の合理性は相対的には減弱していたと評価すべきである。そうすると、本件雇止めにおいては、その理由自体に強度の合理性が要求されるべきであるとはいえず、Xから寄せられる上記期待に見合った程度の合理性さえ欠くといった場合においてはじめて「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合に該当するというべきである

上記判例のポイント3の考え方は非常に参考になります。

期待の合理性についてあるかないかの2択で考えるのではなく、強弱で捉えた上で、減弱している事情がある場合には、それに見合った雇止めの理由があれば足りると考えるわけです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。