不当労働行為135(甲野堂薬局事件)

おはようございます。

今日は、担当商品の賞味期限切れを理由として、組合員に業務改善を命じ、損害賠償を請求し、出勤停止処分に付し、解雇したことが不当労働行為にあたるかについて判断した事案を見てみましょう。

甲野堂薬局事件(中労委平成27年7月1日・労判1126号89頁)

【事案の概要】

本件は、担当商品の賞味期限切れを理由として、組合員Aに業務改善を命じ、損害賠償を請求し、出勤停止処分に付し、解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

なお、Y社とAは、それぞれ地位不存在確認等請求および地位確認等請求の別件訴訟を提起していたが、平成25年12月19日、Aの解雇を無効とし、地位確認について最高裁で確定し(最判平成26年3月6日)、Y社は、解雇期間中の賃金を支払い、Aは、会社に復職している。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 解雇の理由がA組合員の些細な言動をあえて指摘したに過ぎないものであったこと、Y社がA組合員を会社から追い出したいと考えていたものと推認されること、労使間の対立がピークを迎えていた状況下で同解雇が行われていたものであったことからすれば、当該解雇は、A組合員の活動をけん制ないし抑制することを目的としていたY社が、社内の唯一の組合員であったA組合員を会社から追い出すことを企図し、業務改善命令及び損害賠償請求を始めとする一連の行為の最後の仕上げを目的として行ったものと認めるのが相当である。

2 以上からすると、Y社の21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分、同年12月30日付け業務改善命令並びに22年2月23日付け解雇はいずれもA組合員が組合員であることないし同人の組合活動を理由として行われたものであり、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たる。

組合員に対する解雇等に合理的理由が認められない場合には、不当労働行為にあたります。

このような場合の不当労働行為該当性については、労働組合法特有の話というよりは、一般的な解雇事案と同様の判断をすれば足ります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。