おはようございます。
今日は、長年更新を繰り返してきたパート社員に対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
エヌ・ティ・ティ・ソルコ事件(横浜地裁平成27年10月15日・労判1126号5頁)
【事案の概要】
本件は、Y社のパートタイム社員として勤務していたXが、Y社との間で15年7か月にわたり期間1年又は3か月の雇用契約を約17回更新してきたにもかかわらず、Y社が平成25年11月28日にXの業務遂行能力不足ないしY社の業務上の理由により同年12月31日をもってXを雇止めにしたのは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上不相当であると主張して、Y社に対し、雇用契約が更新されたものとして雇用契約上の地位確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金・賞与及び遅延損害金の各支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
【判例のポイント】
1 Y社は、NTTのグループ会社からコールセンター業務を受託して運営することを主な業務としているところ、Xが従事していた104業務は、受託業務の中でも長く受託されてきた業務であり、規模が縮小しているとはいえ、同様に長く受託してきた他の業務が終了したり、一部の業務は他社に移行したりする中で、一定の人員が確保され、なお継続しているもので、Y社の恒常的・基幹的業務であると認められる。
2 ・・・Xは、賃金が低くパートタイム社員と扱われているが、一般の常用労働者とほぼ変わらない勤務条件で勤務していたものと認められる。
さらに、Xの雇用契約更新状況をみると、約17回の更新を経て勤続年数が15年7か月に及んでおり、更新手続は、契約期間終了前後にロッカーに配布されるパートタイマー雇用契約書に署名押印し、これを提出するというごく形式的なものであり、形骸化していたといわざるを得ない。
この点、B所長は、更新の際に面談等をしていたと証言するが、その内容は具体性を欠いており、信用できない。
以上に鑑みれば、本件雇止めは、期間の定めのない雇用契約における解雇と社会通念上同視できると認めるのが相当である。
したがって、X・Y社間の雇用契約は労働契約法19条1号に該当すると認め、本件雇止めについては、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるか否かを判断する。
3 ・・・Y社のいう他業務への転出の勧めは、他業務の内容等を掲示して紹介するというものにとどまり、他業務を希望する社員は改めて他業務の担当部署で採用面接を受けなければならず、適性がなければ採用されないのであるから、雇止め回避策としては不十分であるといわざるを得ない。
また、Y社が雇止め対象者に対し雇用継続の希望を確認して他業務の紹介等をしたのは、雇止めの通告後であると認められ、通告前に個別に雇用継続の希望を確認したり、希望する業務を聴取したりしたことは認められないから、Y社の上記措置は雇止め回避策ではなく、雇止めを前提とした不利益緩和策にすぎない。
4 本件雇止めについては、人員削減の必要性は存在するものの、客観的に合理的な理由あるいは社会通念上の相当性の要件充足性の程度は弱いものであるから、相応の手厚い雇止め回避措置を講じることが期待されるところ、Y社は、Y社の他業務担当部署への異動を予定していないとしても、雇止め後に引き続き円滑に他業務に従事できるよう雇止め通告前から調整を図るなど、より真摯かつ合理的な努力をする余地があったというべきであるから、人員削減の必要性の点における上記要件充足性の程度の弱さを補完するに足りる程度に手厚い雇止め回避努力がされたとは認められない。
多くの裁判例が労契法19条2号事案であるのに対し、今回の裁判例は1号事案です。
どのような場合に19条1号に該当するのかをこの裁判例から読み取り、実務に活かしてください。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。