不当労働行為43(シオン学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、一時金の協定平均額以下の支給と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

シオン学園事件(神奈川県労委平成24年3月29日・労判1046号91頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車学校を経営する会社である。

X組合とY社は、平成21年7月、上期一時金について、1人平均15万円とする協定を締結した。

同日、Y社は、上期一時金として支部組合員16名に平均11万1883円(組合員16名中13名は協定平均額以下)を支給した。

Y社は、各人の一時金支給額の決定にあたり、稼働考課及び考課査定を実施した。

【労働委員会の判断】

一時金の協定平均額以下の支給は不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 稼働考課は、それ自体としては客観的な基準や、組合員か否かを問わない基準を内容とするものであるとしても、法令の趣旨に反したり、組合活動を行う支部組合員らにとって殊更に不利益な結果となるものを含み、Y社はそのことを容認してきたものと認められるのであって、このような稼働考課を含む考課査定制度が稼働状況を端的に評価するものであるというY社の主張は採用できない。

2 考課査定において、Y社の定める評価項目やその評価基準は、基本的にはY社の裁量に任せられているものだとしても、本件においては、その評価基準が曖昧であることにより、支部組合員が恣意的に評価される可能性を多分に含んでいるものだと言うことができ、そのような制度的問題点についてY社はあえて改善策をとることなく放置し、支部組合員にとって不利益な結果を容認してきたものである。したがって、考課査定には恣意性が生じる余地がなく、不利益取扱には当たらないとの会社主張は採用できない。

3 Y社は従来組合活動を嫌悪していたところであるが、訴訟や労働委員会での紛争が続き、Y社は組合らをいっそう好ましくない存在と捉え、また、組合活動を行う支部組合員らの給料の水準が高かったことは、Y社の経営を逼迫させるものだと捉えていた。そして、Y社が経営上、人件費の軽減を迫られた際、稼働考課に関しては、Y社が会社に貢献していないと考える支部組合員の組合活動時間を稼働可能時間から減算するなどして結果的に支部組合員を低査定とし、考課査定に関しては、基準の曖昧な評価項目を残したまま公正な評価を確保するための努力を怠り、組合らに対する情報開示や説明も十分なものではなかった。そして、そのことが本件格差の原因となったものと認められ、Y社はそのような結果を容認したまま、積極的に是正しようとすることもなかったのである
よって、本件格差は不当労働行為に当たらないとのY社の主張はいずれも採用できず、本件格差が労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとの前記推認を覆すものではない。

実質的にみれば、査定のしかたが、組合員を不利益に取り扱うようになっていると判断されてしまえば、どれだけ体裁を整えても、不当労働行為と判断されてしまいます。

また、評価基準をあえて不明確なものにしておき、いかようにも判断できるようにしてある場合であっても、結果的に組合員ばかりが不利益な評価を受けているのであれば、不当労働行為意思が推認されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。