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今日は、欠勤、有給休暇取得による賃金控除規定の有効性が争われた裁判例を見てみましょう。
宮城交通事件(東京地裁平成27年9月8日・労経速2263号21頁)
【事案の概要】
本件は、Y社においてタクシー運転手として稼働しているXらが、Y社の賃金控除に関する規定が公序良俗に反し、違法無効であると主張して、Y社に対し、それぞれ控除された賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。
なお、乗務員賃金規則では、欠勤し、又は有給休暇を取得した場合、賃金が以下のとおり控除される旨の規定がある。
控除額=基本給÷月間所定勤務日数×(欠勤日数+有休取得日数)
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 労基法136条が、使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないと規定していることからすれば、使用者が有給休暇の取得を何らかの経済的不利益と結びつける措置を採ることは、その経営上の合理性を是認できる場合であっても、できるだけ避けるべきであり、また、このような措置は、有給休暇を保障した労基法39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが、労基法136条は、それ自体としては、使用者の努力義務を定めたものであって、労働者の有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されず、前記のような措置の効力については、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては同法が労働者に前記権利を保障した趣旨を実質的に失わせると認められるものでない限り、公序に反して無効となるということはできないと解するのが相当である(最判昭和60年7月16日、最判平成元年12月14日、最判平成5年6月25日参照)。
2 これを本件についてみるに、Y社については、その収入の大部分をタクシー乗務員の乗務による営業収入に依存しているという、タクシー会社としての特色があり、Y社の営業収入に対する各乗務員の貢献度をそれぞれの賃金額に反映させ、その後の業務の遂行を奨励することを通じて、営業収入の維持・向上を図る経営上の必要があることが容易に推認され、本件賃金控除規定が有給休暇の取得又は欠勤をした場合の基本給の受給に関する調整を目的とする旨のY社の説明も、広い意味では前記趣旨に向けたものであると認められるところ、Y社は、本件賃金控除規定について、多数組合の同意を得ており、労働基準監督署の確認も受けている。
3 ・・・さらに、実際の有給休暇の取得率をみると、Xらが所属する自交総連東京地連宮城交通労働組合の組合員と、厚生労働省の発表した数値との間に有意の差があるとは即断できない。
これらの点を総合考慮すると、本件賃金規定について、これがタクシー乗務員の有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては労基法が労働者に有給休暇取得の権利を保障した趣旨を実質的に失わせるとまで認めることはできず、これが公序良俗に反するものとして違法無効であるということもできない。
労働者側は納得しにくい内容かもしれません。
使用者側は、有給休暇についてこのような判断があり得るということを理解し、労務管理の参考にしてください。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。