有期労働契約60(シャノアール事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、約8年半更新を繰り返したアルバイトに対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

シャノアール事件(東京地裁平成27年7月31日・労判1121号5頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社の下で長期間アルバイトとして勤務してきたが、Y社の方針により雇止めされたことに対し、雇止めの無効を主張して、地位確認及び賃金請求をする事案である。また、Xが加入した組合とY社との間での団体交渉等でのY社の発言が不法行為に該当するものとして、慰謝料の請求もしている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 アルバイトの有期労働契約の契約更新手続が形骸化した事実はなく、X・Y社間の労働契約は期間満了の都度更新されてきたものと認められることから、本件雇止めを「期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該機関の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視」することはできず、労働契約法19条1号には該当しない

2 あくまで印象論ではあるが、当裁判所にはXとH店長との契約更新手続における会話にぎこちなさを感じており、組合交渉中であることを割り引いて考えるとしても、XとH店長とのコミュニケーションの密度の薄さを推認させる。そうすると、H店長がXの勤務頻度の低さを問題視し、雇止めを検討することは不合理ではない
結局のところ、本件ではY社組合間での組合交渉が継続していたことから、H店長が店長権限でXを雇止めすることが結果としてできなかったにすぎず、本来であれば、本件雇止め当時、XはH店長から勤務頻度の少なさを理由として雇止めされてもおかしくない立場にあったと客観的に評価される
・・・以上を総合とすると、Xの雇用継続の期待は単なる主観的な期待にとどまり、同期待に合理的な理由があるとはいえないことから、労働契約法19条2号にも該当しない

3 ・・・しかし、本来議論は論理的に行われるべきところ、議論においては主張を的確に捉えることに主眼が置かれるはずである。Xは、G人事部長の述べる理由の一部の言葉をとらえて不法行為の成立を問題としていることになるが、議論全体からすればごく一部の事項であるし、理由は主張と関連づけて理解されるべきものである。G人事部長にXの人格を傷付ける意図があったことを認めるに足りる証拠がないことをも考慮すると、当裁判所としては、G人事部長の発言の評価につき、やや不相当な面があったきらいはあるとしても、違法な発言とまでは評価できない。その他、Y社の発言が違法であると認めるに足りる証拠はない。

交渉中の一部の発言を取り上げて、その発言を不法行為と捉えられた場合、上記判例のポイント3を参考にしてみてください。

交渉全体、前後の文脈から判断すれば、不法行為とまではいえないということも多々あろうかと思いますので。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。