おはようございます。
今日は、職種限定の有期契約労働者に対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
日本レストランエンタプライズ事件(東京高裁平成27年6月24日・労経速2255号24頁)
【事案の概要】
本件は、Y社から雇止めされたXが、同雇止めが無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、雇止め後の賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、Xの請求を棄却したので、Xが控訴した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 Xは、就業規則上勤務箇所や職場の変更が可能とされていたと主張する。
しかし、XとY社の雇用契約上は、職種は本件配送業務に限定されていたことは争いがないのであるから、Y社に、Xの職種を変更して雇用を継続するよう配慮する義務があるとはいえない。
2 Xは、肩腱板断裂は労働災害であり、雇止めの可否については慎重に検討すべきであると主張するが、Xにおいて労働契約で限定された職務の遂行が困難である上、当直業務は独立の配置換えの対象となるような業務とはいえないなど、本件における事情を総合すると、労働基準法19条1項の解雇制限の趣旨が本件のような場合にまで及ぶとはいえない。
(原審での判断)
3 XとY社との雇用契約に基づき、月に20日以上、1日平均7時間以上勤務していたのであり、勤務形態は臨時的なものでなかったと認められる。そして、XとY社の間では、本件配送業務を目的とする雇用契約が約5年6か月にわたり多数回更新されてきたことからすれば、Xには契約更新の合理的期待(労働契約法19条2号)が認められる。
ただ、雇用期間の定めが明示された契約書が更新の度に作成されていたのであり、XとY社の雇用契約が期間の定めのない契約と同視できる状態(労働契約法19条1号)に至ったとまでは認められない。
4 Xは、本件雇止めの時点で、本件配送業務に従事できる状態ではなかったと認められる。Xは、Y社との間の雇用契約においてXが従事すべき業務として定められた本件配送業務に就くことができない状態であったので、Y社が契約を更新しなかったことについて合理性・相当性が認められる。
労災発生時に雇止めをすることには躊躇する場合もあろうかと思います。
当然のことながら、ケースバイケースで判断していかなければなりませんが、仮に雇止めをする場合には、上記判例のポイント2を参考にしてください。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。