派遣労働22(日本精工(外国人派遣労働者)事件)

おはようございます。

今日は、派遣労働者12名による派遣先会社への地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本精工(外国人派遣労働者)事件(東京高裁平成25年10月24日・労判1116号76頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社から派遣先会社であるY社に対し、派遣元会社に雇用され、平成18年11月10日以前は、業務処理請負の従事者として、翌11日以降は、労働者派遣の派遣労働者として、Y社の工場等において就業していたXら(帰化者を含む日系ブラジル人)が、Y社と派遣元会社との労働者派遣契約の終了に伴い、Y社の工場における就業を拒否されたことについて、主位的に、(1)派遣元会社と派遣先であるY社との間の契約関係が請負契約であった当時のXら、派遣先会社であるY社及び派遣元会社の三者間の契約関係は、違法な労働者供給であり、XらとY社との間で直接の労働契約関係が成立しており、平成18年11月11日以降、派遣元会社と派遣先会社でありY社との間の契約関係が労働者派遣契約に変更された後も、労働契約関係は変化なく維持されていたから、Xらと派遣先会社であるY社との間に直接の労働契約関係が継続していたというべきであること、(2)そうでないとしても、XらとY社との間には、黙示の労働契約が成立していたというべきこと、(3)(1)及び(2)の労働契約の成立が否定されるとしても、Y社には、派遣法40条の4に基づき、Xらに対する雇用契約申込義務があったというべきであるから、XらとY社との間には当該義務に基づく労働契約が成立していたというべきであることを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに上記労働契約に基づいて平成22年1月以降の月例賃金等の支払を求めるとともに、予備的に、(4)長年にわたりXらの労務提供を受けてきたY社には、Xらに対する条理上の信義則違反等の不法行為が成立すると主張して、Y社に対し、それぞれ200万円の慰謝料等の支払を求めたものである。

原審は、Xらの主位的請求をいずれも棄却し、予備的請求を、50~90万円の限度で認めた。

当事者双方が、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

原判決中Y社敗訴部分をいずれも取り消す。

上記各取消部分に係るXらの予備的請求をいずれも棄却する。

Xらの本件控訴をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社は、冨士TRYと労働者派遣契約を締結するまでは、長年にわたり、請負契約の形式を使って実態は労働者派遣としてXらを受け入れてその労務の提供を受けてきたのであり(いわゆる偽装請負)、これは派遣法に違反していたことは明らかである。そして、このようなY社の対応は、当時の派遣法が製造業務について労働者派遣を禁止していたことを考慮したことによるものであると推認されるところである。しかし、Xらは、偽装請負の下においても、継続して冨士各社に雇用され賃金の支払を受けていたのであり、実態が労働者派遣とした場合と比べて、Xらに不利益があったとは認められない
したがって、Y社が偽装請負の下でXらから労務の提供を受けていたことをもって、Xらの権利又は法律上保護された利益が侵害されたものと認めることはできず、Y社に不法行為責任があるということはできない

2 Y社が冨士TRYと労働者派遣契約を締結するに際して、Xらに説明をしなかったとの点は、労働者派遣契約の前後を通じて実態は労働者派遣であることに変わりがなく、また、この点の説明は第一次的には使用者である冨士支社がすべきものである。この点においても、Y社に不法行為責任があると認めることはできない。

3 Y社の藤沢工場で就労していた日本人の派遣労働者が正社員に採用され、日系ブラジル人の派遣労働者が採用されなかったとの事実は認められるが、本件全証拠によるも、日本人と日系ブラジル人との取扱いに上記のような差異が生じた具体的な経緯、理由等は明らかではなく、国籍を理由として差別的取扱いを受けたとまでは認められないから、不法行為が成立するということはできない。

上記判例のポイント1の視点は、是非、参考にしてください。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。