おはようございます。
今日は、転籍先での嫌がらせについての転籍元の責任に関する裁判例を見てみましょう。
大和証券ほか事件(大阪地裁平成27年4月24日・ジュリ1484号4頁)
【事案の概要】
本件は、Y1社からY2社に出向して同社で営業業務に従事していたXが、Y2社への転籍同意書に署名押印したが転籍の合意は成立していない又は無効であるなどとして、Y1社に対し、労働契約に基づき、労働者たる権利を有する地位にあることの確認及び転籍後の平成25年4月以降の賃金の支払を求めるとともに、Y2社に出向した後、上司から様々な嫌がらせを受けて精神的損害を被ったが、これらの行為は、被告らが共謀して行ったものであるとして、共同不法行為に基づき、Y1社及びY2社に対し、連帯して、慰謝料200万円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
Y1及びY2はXに対し連帯して150万円+遅延損害金を支払え
その余の請求を棄却する
【判例のポイント】
1 本件転籍は、平成25年4月1日にXがY1社を退職するとともにY2社に入社することを内容とするものであるから、Bはその旨の申込みをし、Xはこれを了承して同内容の合意が成立したことになる。・・・Xが退職願などの書類を作成しなかったことは本件転籍の効力を妨げるものではない。
2 BはY2社を代理して意思表示を行う権限を有していたと認められるので、BとXとの間に成立した合意の効力は、Y1社だけでなく、Y2社に対しても効果が帰属する。Xが本件同意書に署名押印したことにより、本件転籍につき三者間で合意が成立した。
3 Y2が、旧第二営業部室内にXの席を設けるなどしてXを隔離したこと、約1年にわたり新規顧客開拓業務に専従させ、1日100件訪問するよう指示したこと、Xの営業活動により取引を希望した者の口座開設を拒否したことは、Xに対する嫌がらせであり、不法行為に該当する。
4 BはY2社でのXの業務内容につき報告を受けており、Y2社のXに対する対応を認識していた。Xが本件転籍までY1社の社員であり、新規顧客開拓業務への専従についてはBからもXに説明していたことからすれば、Y2社が上記嫌がらせをY1社と何ら相談することなく行っていたとは考え難い。
Y1社らは、XはY1社入社以来様々な業務に従事したが期待される役割を果たせず、勤務態度等にも問題があり、営業業務への配属後も同様の結果であったなどと主張しており、Y1社にはXを退職に追い込む動機がある。
以上によれば、Y2社はY1社の了解を得た上でXに対する嫌がらせを行っていた。
珍しい裁判例ですね。
上記判例のポイント4の認定はどうなんでしょうかね・・・。担当する裁判官により判断が異なる部分だと思われます。
一応このような判断もあり得るということは理解しておきましょう。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。