守秘義務・内部告発6(レガシィ事件)

おはようございます。

今日は、情報漏洩行為に関する裁判例を見てみましょう。

レガシィ事件(東京地裁平成27年3月27日・労経速2246号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xらにおいて、Y社に対し、Y社がXらの業務上の機密を第三者に漏洩したとして、労働契約上の機密保持義務違反による債務不履行に基づく損害賠償として各々200万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件においては、Xが、本件漏洩行為のうち本件持出行為を雇用期間中に行ったうえ、本件交付行為を退職後に行っていることから、就業規則の禁止規定が本件漏洩行為ないし本件交付行為に適用することができるものであるのか否かを検討する必要がある。
思うに、退職後に機密保持の内容となっている情報を不当に開示する目的で、雇用期間中に当該情報を勤務先から持ち出した場合、雇用期間中に就業規則違反という債務不履行行為に着手しているのであり、その後は、労働契約上の機密保持義務を負わないという点で身分ない自己を道具としてその目的を達しようとするものであると評価できることから、本件漏洩行為は、本件交付行為の部分も含めて、労働契約上の機密保持義務の適用を受けるものと解すべきである

2 漏洩とは、いまだその情報の内容を知らない第三者に情報を伝達することをいうところ、既にその情報を熟知する者に交付するものであっても、その者が提供した情報をさらにその情報の内容を知らない第三者に伝達することが当然に予定されているような場合には、漏洩したことになるというべきである。そして、公開の法廷で行われる訴訟に利用することを前提とした情報の提供も、その情報の内容を知らない第三者に伝達することが当然に予定されている場合として、漏洩に当たるものというのが相当である。したがって、本件交付行為は、本件漏洩行為の一部分を構成するものとして、Y者の就業規則31条4項に違反する債務不履行行為となる。

3 Y社は、代表取締役であるAにおいて、本来の税務・営業活動等に従事することができなくなった時間が生じ、その時間に別紙記載の各項目の業務を行うことができなくなって、利益を喪失したことを主張する。
・・・仮に何らかの必要な作業が主張に係る時間をかけて行われたものと措定するとしても、・・・そのように処理ができなくなった業務により具体的な因果関係をもって発生した逸失利益及びその数額を認めるに足りる証拠も全くない。・・・そうすると、Y社の損害を認定することができない

債務不履行を認定しましたが、損害が認定できないということで棄却されました。

損害の立証が難しいところですね。

日頃から顧問弁護士に相談をする体制を整えておき、速やかに相談することにより敗訴リスクを軽減することが重要です。