おはようございます。
さて、今日は、定年後準社員の雇止めと不当労働行為性に関する裁判例を見てみましょう。
神奈川都市交通事件(東京地裁平成23年4月18日・労判1040号69頁)
【事案の概要】
Y社は、一般常用旅客自動車運送事業等を営む会社で、神奈川県を中心に11か所の営業所を有し、従業員数は1541名であり、川崎営業所の従業員は約230名であった。
Xは、昭和61年2月、Y社に入社し、以後、タクシー乗務員として川崎営業所に勤務していた。
XらとY社との間では、事務所使用料および組合役員手当金等請求、休業補償等請求、未払賃金の支払請求、解雇された組合員の地位確認、団交におけるY社の対応についての不当労働行為救済申立等の紛争が生じ、それぞれ訴訟等に至っている。
Xは、平成14年4月、満60歳の定年に達し、その後3回契約更新されたが、16年4月、期間満了により雇止めとなった。
【裁判所の判断】
本件雇止めは、不当労働行為にあたらない
【判例のポイント】
1 Y社の就業規則の規定上、満60歳の定年以降、満62歳までの雇用延長と、満62歳以降の準社員としての採用を明確に区別して規定し、満62歳以降の者を準社員として採用するに当たり、「特に会社が必要とする者及び本人の希望により会社が認めた者」について採用することがあるという以上、満62歳以降の準社員としての採否に際し、Y社に裁量権があることは明らかである。
2 Y社が、満62歳に達した乗務員を準社員として採用するか否かについては、裁量権があるものの、仮にY社の裁量権行使に際して考慮した事情が、全く事実の基礎を欠くとか、考慮してはならない事情を考慮した等、与えられた裁量権の範囲を逸脱、濫用したと認められる場合には、そのような行為を行ったY社の雇止めには、不当労働行為意思を認める余地がある。
3 Xを準社員として採用するか否かを決するに当たり、就業時間中の休憩取得指示違反、就業時間中の組合活動、制帽着用義務違反及びタコメーターの開閉等の事情を考慮することは、いずれも相当というべきであり、本件雇止めに至るY社の判断には、裁量権の逸脱、濫用があったとは認められない。
継続雇用に関し、会社側に裁量を認め、裁量権を逸脱していないかを判断しています。
行政事件のような発想ですね。
採用の可否について、会社側が判断要素としたものはすべて不当労働行為に該当しないとし、裁量権の逸脱・濫用はないと結論づけています。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。