不当労働行為115(W社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組法上の使用者性が問題となった命令について見てみましょう。

W社事件(兵庫県労委平成26年9月25日・労判1110号92頁)

【事案の概要】

本件は、A社からA社の店舗D店等において食料品等の販売を委託されていたY社の解散に際し、X労働組合がD店において、Y社のパート従業員として就労していたX組合の組合員Bの雇用継続を求めてA社に団交を申し入れたところ、A社がBの使用者には当たらないことを理由に拒否したことが不当労働行為に該当するとして、また、A社がBを雇用しなかったことが不当労働行為に該当するとして、救済申立てをした事案である。

【裁判所の判断】

不当労働行為にはあたらない

【判例のポイント】

1 A社がY社に対して支配的地位にあるとはいえないことは、・・・で述べたとおりであるし、A社が、Y社に販売業務を委託したのは、独立を希望する社員の独立支援と、店舗ごとに個性を持たせて競争力を伸ばすことを目的に、制度として行っていたものであり、A社が違法又は埠頭な目的のためにY社の法人各を利用したとはいえない。
以上のとおり、Y社の法人格は形骸化しておらず、A社はY社の法人格を濫用していないのであるから、Y社の法人各を否認することはできない

2 ①Y社の使用する建物、設備及び備品をA社が無償で貸与することは、販売委託契約の内容として通常あり得るものと理解できるし、②Y社の株主や全ての取締役がA社の元従業員であるとしても、Y社においては、取締役会が開催され、人事、経営等に係る会社の意思決定がなされ、独立して経営を行っているのであるから、これらの事実をもってA社とY社が実質的に同一であるということはできない

3 団体交渉要求事項との関係で、A社の使用者性について検討すると、Bの雇用契約の不更新の原因となった解散については、Y社が、将来の経営状況が厳しいとの見地から自らの取締役会で決定したものであり、その決定に対してA社が影響力を行使したとの疎明はなく、さらに、・・・で判断した理由から、いずれの団体交渉要求事項についても、A社は、Bの労組法上の使用者であるとはいえない
よって、労組法7条2号の団体交渉拒否について、A社がBの使用者であると解することはできない。

法人格を否認するのは、本当に難しいです。

今回の事案でもハードルを越えることはできませんでした。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。