セクハラ・パワハラ11(暁産業ほか事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、上司の発言が不法行為に当たるとして損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

暁産業ほか事件(福井地裁平成26年11月28日・労判1110号34頁)

【事案の概要】

本件は、Xが自殺したのは、C及びDのパワハラ、Y社による加重な心理的負担を強いる業務体制等によるものであるとして、XがY社らに対し、C及びDに対しては不法行為責任、Y社に対して主位的には不法行為責任、予備的には債務不履行責任に基づき、損害金1億1121万8429円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社及びCは、連帯して7261万2557円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 ・・・「会社辞めたほうが皆のためになるんじゃないか、辞めてもどうせ再就職はできないだろ、自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば、店でも出せば、どうせ働きたくないんだろう」「いつまでも甘甘、学生気分はさっさと捨てろ」「死んでしまえばいい」「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」
これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Xの人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為に当たると認められる

2 CのXに対する不法行為は、外形上は、Xの上司としての業務上の指導としてなされたものであるから、事業の執行についてなされた不法行為である。本件において、Y社がCに対する監督について相当の注意をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから、Y社はXに対し民法715条1項の責任を負うこととなる。

3 Xは、Cから注意を受けた内容のメモを作成するように命じられ、誠実にミスをなくそうと努力していた中で、Cから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。Xは、高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、Cの前記言動から受ける心理的負荷の内容や程度に照らせば、Cの前記言動はXに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。そして、Xには、業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないし、既往症、生活史、アルコール依存症などいずれにおいても問題はないのであって、性格的な偏りもなく、むしろ、上記手帳の記載を見れば、きまじめな好青年であるといえる。
そうすると、・・・本件自殺とCの不法行為との間の相当因果関係が認められる。

叱責の域を超えて、人格を否定したり、威迫したと評価される場合には不法行為と認定されます。

上司も人間ですから、感情的になってしまうこともあります。だからこそ、このような裁判例を参考にして、冷静な対応が求められます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。