おはようございます。
今日は、給与規程等の改正にかかる団交の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
学校法人札幌大学事件(北海道労委平成26年10月10日・労判1106号93頁)
【事案の概要】
本件は、Y社が、X組合に対し、平成24年9月4日掲示の法人給与規程の改正について、改正理由を資料を示して説明することなく団交継続中に本件給与規程改正を一方的に施行するなどしたこと、また、教員の定年後の勤務延長任用に関して、法人教員勤務延長任用規程の改正の協議を労組に申し入れず一方的に実施するなどしたことが、不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
【労働委員会の判断】
Y社の団交における対応は不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 Y社は、上記規程改正につき、財政状況の健全化のため人件費の削減が必要であることを説明するだけではなく、上記規程改正が財政状況の健全化にどの程度寄与し、今後どの様に財政状況を健全化していくのか、財政状況の見通しや中長期的な経営方針などを明らかにするなどして、上記規程改正によって労働者の被る不利益の程度が必要以上に過大なものではなく、また、特定の労働者だけが不利益を被るものではないなど、経過措置や代替措置などの他の施策も含めて上記規程改正が財政状況を健全化する施策として適正なものであることを説明しなければならない。
2 Y社は、上記規程改正によって労働者の被る不利益、特に勤務延長任用教員に対する年俸額の削減につき、これまで申入れをしていた段階的な削減から一律に年俸額480万円に削減すること、さらには校務の負担及び休職の廃止などの不利益につき、労組の要求や主張に対し、単に財政難である旨を繰り返すのではなく、段階的な削減から一律に削減することにした理由や必要性の論拠、さらには激変緩和措置の有無などに関する情報を提供したり、校務の理解に対する溝を埋めるような提案や説得をしておらず、十分な説明をしたとはいえない。
3 よって、Y社は、上記規程改正に係る団体交渉において、労働条件の更なる不利益変更につき、誠実に対応したと認めることはできない。
使用者側の説明が不十分であるとして誠実交渉義務違反とされた例です。
労働条件の中でも、賃金は労働者にとって最も重要なものですから、他の労働条件の不利益変更と比べても、より一層の説明が必要です。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。