おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
今日は、勤務状況不良等を理由とする解雇の有効性と反訴損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。
ギャップ・ジャパン事件(東京地裁平成26年8月8日・労判1107号84頁)
【事案の概要】
甲事件は、Xが、Y社から解雇されたがその解雇が無効であると主張して、Y社に対し、解雇後再就職までの賃金の支払い、および違法な解雇に基づく損害賠償を求めるとともに、在職期間中の割増賃金および付加金の支払いを求めた事案である。
乙事件は、Y社が、Xの申し立てた労働審判が権利濫用であるなどと主張して、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
なお、Xは、本件解雇後、労働審判を申し立て、その後、他社へ就職した。
労働審判では、解決金60万円の支払を命じる審判がされたが、Y社が異議を申し立てたため、甲事件訴訟に移行した。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し、48万5713円を支払え(未払賃金)
Y社はXに対し、42万5426円を支払え(在職期間中の割増賃金)
Y社はXに対し、33万7396円を支払え(付加金)
Y社の反訴請求は棄却
【判例のポイント】
1 ・・・また、Xが転職先を探していたとしても、直ちに労働意欲を失ったとは認められず、Y社の主張する解雇事由には当たらない。
・・・Xは営業のCとともに同社に謝罪に出向いており、営業に責任転嫁していたわけではないし、解雇に値するほどの損害がY社に生じたと認めるに足りる証拠はない。
1 なお、Y社は、予備的に懲戒解雇も主張するが、懲戒解雇通知は、Xの他社への就職後にされているのであるから、その効力を判断する必要がない。
2 本件解雇は無効であるが、Xについて、無効な解雇に伴う損害として、賃金請求が認められてもまかなうことができない損害が生じたとは認められない。
3 本件解雇は無効であるから、本件労働審判の申立ては理由があるものであって、不法行為に当たらない。
労働審判の申立が権利濫用にあたるという会社側の主張は無理があります。
最終的には、労働審判での解決金の倍以上の金額を支払うことになっています。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。