解雇167(ヴイテックプロダクト(旧A産業)事件)

おはようございます。

今日は、休職後の復職請求と経営再建等を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ヴイテックプロダクト(旧A産業)事件(名古屋高裁平成26年9月25日・労判1104号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に従業員として雇用されていたXが、Y社に対し、Y社のXに対する解雇が無効であると主張して、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②解雇された平成24年10月以降の未払賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、上記解雇は無効であると判断した。

これに対し、Y社が、原判決の上記認容部分を不服として、控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(以下、原審判決)

1 Xは、本件組合を通じてY社と本件覚書を締結しており、その中で、Y社はXに対し、退職勧奨を行わないことや、Xの復職に際しては、従来の労働条件通りで復職させること等を約束しているところ、Y社による本件解雇は、明らかに上記約束に反する。また、休職前のXのY社における勤務態度は、上司の指示に対して反抗的であったり、上司やほかの従業員との良好な人間関係を築くことができなかったり、度々問題行動を取ったりなど、決して適切なものではなかったことは認められるものの、就業規則上の解雇事由のいずれかに直ちに該当するとは認められない上、Y社において、Xに対し、度々指導や注意をしていたことは認められるものの、譴責や減給、出勤停止といった段階的な処分に付したことを認めるに足りる証拠もない
よって、本件解雇は、社会的相当性を欠き、解雇権を濫用したものとして違法無効な解雇というべきである。

2 Y社は、経営陣が全員交代し、危機的な経営状況下において、人件費削減等の合理化を推進しているため、就労に制限の付されているXを雇用する余裕はない旨主張する。
しかしながら、Y社が、平成23年8月以降、危機的な経営状況であることを裏付ける客観的な証拠は全くない。また、仮にY社の主張のとおりであるとしても、人員削減の必要性、解雇回避の努力の有無、Xを被解雇者として選定したことの妥当性及び手続の妥当性等について主張立証がなされることが必要であるところ、少なくとも、Y社が、希望退職を募るなど解雇回避の努力を尽くしたと認めるに足りる証拠は見当たらず、かえって、証拠によれば、Y社においては正社員の求人募集をしていることが認められることからすれば、Y社の上記主張は直ちに採用することはできない

本件では、会社が組合と覚書を交わしており、その内容に反して解雇しているため、明らかに会社側が分が悪いです。

判決理由を読むと、会社としても、敗訴リスク覚悟で解雇に踏み切ったことが窺えますが、訴訟上の和解ができず、判決までいくと、このような内容の判決になってしまいますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。