解雇154(アウトソーシング(解雇)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は、契約に必要な誓約書等を提出しなかったことを理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

アウトソーシング事件(東京地裁平成25年12月3日・労判1094号85頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社であるY社と雇用契約を締結したXが雇用契約締結に必要な書類を提出しなかったとしてY社に解雇されたことから、Xが本件解雇は無効であるとして、Xが他社に就職する前日(平成25年1月31日)までの間の賃金(既払分を除く)の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

本件契約は平成24年8月31日をもって終了
→賃金54万2554円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 本件協定書は、使用者と労働者間の協定文書であり、本件誓約書は、労働者が遵守事項を誓約する文書であり、労働者に対して任意の提出を求めるほかないものであって、いずれも業務命令によって提出を強制できるものではない。したがって、Xが本件誓約書等の提出を拒んだこと自体を業務命令違反とすることはできない
ただ、本件誓約書を提出しなかった場合、それが本件誓約書に列挙された事由を遵守しない旨を表明したと評価できるようなときやY社の円滑な業務遂行を故意に妨害したと評価できるようなときには、社員としての適格性の問題が生じうるが、Xは、作業服代の控除の条項を問題にしていたのであって、本件誓約書に列挙された事由を遵守しない旨を表明したものとは評価できない。また、Xは、Y社の業務遂行を妨害する目的で本件誓約書等の提出を拒んでいたとも評価できない。そうすると、Xが本件誓約書等の提出を拒んだことは、「成績不良で、社員として不適当と認められた場合」に当たらない。

2 Y社は、A食品に対して、派遣労働者から守秘義務の履行に関する誓約書を提出させ、A食品の機密保持の確保を図る義務を負っており、本件誓約書の提出がないことにより業務上の不都合が生じていたといえる。しかしながら、Y社は、本件誓約書の提出がないまま3日間Xを勤務させているが、A食品との間で具体的な問題が生じていた様子はうかがわれない。また、Y社は、A食品の勤務では作業服代の控除が生じない旨の確認書を差し入れるなどして、Xの指摘する疑問点を解消した上で本件誓約書の提出を求めることもできたのであって、業務上の不都合が解雇もやむを得ない程度まで高まっていたとは認められない

3 本件業務に関する求人情報には「長期(3か月以上)」との記載があるが、雇用契約書には「実際に更新するか否かは、従事している業務の状況による」と記載されていること、就業条件明示書には1年単位の変形労働時間制を採用する旨が記載されているが、Xについて1年単位でシフト表が組まれていたわけではないことに照らすと、「長期(3か月以上)」との記載が更新を保証するものとはいうことはできない。
・・・そうすると、更新が1度もされたことがないXについて、更新の合理性期待があったと認めるに足りる事情はないというべきであり、本件契約は期限の8月31日をもって終了したと認められる

従業員に書面の提出を求めたにもかかわらず、提出されない場合、ただちに業務命令違反になるかは慎重に検討する必要があります。

まして、解雇をするとなるとなおさらです。

従業員が提出を拒む理由に合理性があるかどうかを検討する必要がありますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。