おはようございます。
さて、今日は、ガソリンスタンド元所長の管理監督者性と割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。
乙山石油事件(大阪地裁平成25年12月19日・労判1090号79頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員であるXが、Y社に対し、未払割増賃金等の支払を求めた事案である。
本件の争点は、Xが、本件SSの所長就任後、労基法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に当たるかである。
【裁判所の判断】
管理監督者にはあたらない
→Y社に対し、346万6917円の未払割増賃金等の支払を命じた
【判例のポイント】
1 管理監督者については、労働基準法の労働時間等に関する規制は適用されないが(同法41条2号)、これは管理監督者が、企業経営上の必要から経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等の規制を超えて行動することを要請されざるを得ない重要な職務や権限を付与され、また、実際に労働時間について広範な裁量を有し、賃金面においても、他の一般労働者に比べてその職務や権限等に見合った十分な優遇措置が講じられている者であれば、同法の厳格な労働時間等の規制に服しないとしても保護に欠けるところはないとの趣旨によるものと解するのが相当である。そこで、同条にいう管理監督者に該当するかの判断にあたっては、この趣旨を踏まえ、職務内容や権限及び責任、勤務態様や賃金面の処遇等の実態に照らして総合的に判断することが相当である。
2 Xは、所長就任後も現場の業務に従事しており、営業時間の変更に関してY社代表者の了解を得た上で実施しており、営業時間を自由に変更する権限までは有しておらず、灯油の仕入値の交渉はY社代表者が担当しており、Xは全ての仕入値の交渉までは担当しておらず、金銭管理はY社代表者が行っていた。
3 労務管理に関しても、本件出勤予定表を作成していたのはXであるにしても、Y社代表者も月の休日の日数はミーティングにおいて決めていたと供述するようにXが完全に自由に決められたわけではなく、むしろ、Y社代表者は、XがHやCを早めに退社させていたことについて注意しているから、Xの社員の出勤管理に関する権限は限定的なものに過ぎなかったといえる。また、従業員の給与は予め定められた計算式により計算されておりXには正社員の給与等を決定する権限はなく、アルバイト従業員の時給変更に関しては、Y社代表者の妻に意見を述べ、採用されたに過ぎない。
4 これに加え、労働時間に関しては、Xは所長就任後も本件出勤予定表に従って勤務しており、さらに、平成23年11月頃にはY社代表者からタイムカードを退勤時にも打刻するように指示を受けるなど、出退勤に関する裁量権を有していたとは認められず、賃金額については、所長就任の前後で大きな差はなく、労基法上の労働時間等の規制を超えて勤務することを期待するに足りる処遇がされていたとは認め難い。
以上を総合勘案すると、Xが管理監督者に該当するとは認められない。
本件の原告(X)に全く管理監督者性を肯定する要素がないとは言えませんが、これまでの管理監督者性についての裁判所の厳しい判断からすると、このような結果になってしまうわけです。
「例外規定の厳格解釈」というルールからすれば、この解釈の厳しさもやむを得ないのでしょうね。
管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。