労働時間23(B社事件)

おはようございます。

さて、今日は、宿直勤務の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

B社事件(東京地裁平成17年2月25日・労判893号113頁)

【事案の概要】

Y社は、建設施設の保守運行業務並びに修理工事、警備業務並びに防災防犯設備の施設管理等を目的とする会社である。

Xは、Y社の従業員であり、警備業務に従事していた。

Xは、Y社に対し、更衣時間・朝礼時間・休憩時間及び仮眠時間が労基法上の労働時間に当たると主張し、未払賃金等の請求をした。

【裁判所の判断】

休憩時間は、労基法上の労働時間に該当しない。

仮眠時間は、労基法上の労働時間に該当する。

【判例のポイント】

1 労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれる時間をいうが、上記労働時間に該当するか否かは、労働者が当該時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価できるか否かにより客観的に定めるものというべきである。

2 ・・・当該時間が非労働時間である休憩時間といえるためには、単に実作業に従事しないということだけでは足らず、使用者の指揮命令下から離脱しているといえる時間、すなわち、労働者が権利として労働から離れることを保障されていると評価できることを要すると解される。そして、労働からの解放が保障されている休憩時間といえるためには、当該時間における労働契約上の役務提供が義務づけられていないと評価される必要がある。
・・・しかしながら、・・・休憩時間には、飲食店で外食する者がいたり、食事を持参していない者が食事を購入するために外出したり、あるいは仮眠をとる者もいるなど自由であったこと、休憩時間には、警備員が警備服上着(ジャケット)を脱ぐことは認められており、ネクタイを緩めることもあった旨認められるのであって、これらの事実に照らせば、休憩時間は事業場外への外出も可能であるなど、労働契約上の役務提供が義務づけられていなかったものと評価することができる

3 Xは、本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対し直ちに相当の対応をすることを義務づけられていると認められるのであるから、本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務づけられていると評価することができる。したがって、Xは、本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めてY社の指揮命令下に置かれているものであり、本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。

4 Y社は、宿直した警備員に対し、宿直1回当たり2300円の特定勤務手当を支払っている。仮に、時間外労働が存在しているというのであれば、特定勤務手当の趣旨からして、その支払金額をXの請求額から控除すべきである、と主張する。
しかしながら、特定勤務手当は、「変形労働時間制の適用による勤務において宿泊した場合は、特定勤務手当1日につき、2300円を支給する」と規定されている上に、Y社は、仮眠時間中に実作業が30分以上に及ぶ場合に限って時間外勤務手当を支給しているが、その場合であっても、特定勤務手当が支給されていると認められるから、特定勤務手当の趣旨は、24時間勤務に伴う勤務に対する対価と解されるのであって、時間外賃金とは趣旨が異なるものと認められるから、これを時間外賃金の一部払いであると認めることはできず、Y社の主張は採用できない

オーソドックスな感じです。

未払時間外手当の請求に対して、会社側で「既に●●手当に含まれている」と主張することがよくあります。

上記判例のポイント4のようにです。

ここは、会社側が事前に対策をとっていれば、必ず対応できる部分です。

訴訟になってからでは、どうしようもありません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。