不当労働行為19(飛鳥交通神奈川(井土ヶ谷営業所)事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合別残業抑制と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

飛鳥交通神奈川(井土ヶ谷営業所)事件(神奈川県労委平成23年4月27日命令)

【事案の概要】

Y社は、従業員465名(井土ヶ谷営業所に262名)をもってタクシー事業を営んでいる。

X組合は、Y社に対し、団交において、深夜勤務の残業代を支払うよう求め、その後、時間外割増賃金の支払を求める訴訟を提起した。

Y社は、訴訟の原告であるか否かにかかわらず、自交総連組合の組合員全員を対象に残業抑制等を開始した。

【労働委員会の判断】

組合別残業抑制は、不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 時間外勤務が禁止されたことで、自交総連組合の組合員には賃金額の減少という経済的不利益性が存在する。また、公休出勤についても、休日における所定時間外労働であるから、これを禁止することは、前記時間外勤務の禁止と同様の理由で賃金が減額となり、経済的不利益性があるものと言える。

2 以上のことからすると会社は、個々の組合員が残業代について異議があること及び自交総連組合の組合員であることのゆえをもって残業抑制等の不利益取扱いを行っているものであり、また、本件残業抑制等の措置は、残業代未払請求という労働組合の活動方針に対する重大な妨害行為に当たるとともに、組合員を自交総連組合から脱退させようとの意図に基づく支配介入に当たると言うほかない。

3 すなわち、残業代未払請求という自交総連組合及びその組合員の行為は、その請求に係る法的結論の帰趨はともかくとして、労働基準法に基づく正当な権利主張と言うことができる。したがって、労働組合の正式な活動方針に従い、当該組合員が裁判所に支払請求を提起することは、労働組合の正当な行為に当たるから、本件残業抑制等の措置は、正当な組合活動を理由とする報復的な不利益取扱いに該当する。また、会社が、個々の組合員が別件訴訟の原告となっているか否かを問うことなく、自交総連組合の組合員であることのみをもって一律に残業抑制等を行っていることは、労働組合の組合員であることを理由とする不利益取扱いに該当する

4 さらに、会社が別件訴訟を取り下げさせるために本件残業抑制等の措置を取っていることは、労働基準法に基づく残業代未払請求という組合の自主的な活動方針に対する露骨な妨害行為に当たる。と同時に、本件残業抑制等の措置は、自交総連組合を脱退した者が直ちに残業抑制等の対象から外されていることからすれば、同組合員に自交総連組合からの脱退を強く促す悪質な脱退工作というべきであり、これらの点でも労働組合法7条3号で禁止された支配介入に該当する

やり方が露骨だと、このような結果になってしまいます。

会社としては、もう少し「見せ方」を工夫しなければいけません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。