おはようございます。
今日は、配転に関する裁判例を見てみましょう。
マリンクロットメディカル事件(東京地裁平成7年3月31日・労判680号75頁)
【事案の概要】
Y社は、米国に親会社を置く医療機械器具等の輸入、販売等を業とする外資系会社で、従業員は約100名であり、大阪、仙台、札幌、福岡及び名古屋に営業所がある。
Xは、平成3年2月、Y社に採用され、東京において、マーケティング担当のマネジャー(課長代理待遇)として、職務に従事した。
Y社は、平成6年3月、Xに対し、営業部として仙台へ配転する旨の辞令を発令した。なお、本件配転命令以前に、Y社において、マーケティング部から営業部への異動を内容とする配転の前例はなかった。
Xは、本件配転命令に承服できない旨主張した。
Y社は、就業規則に基づきXを懲戒解雇した。
Xは、本件配転命令及び懲戒解雇の有効性を争い、仮処分を申し立てた。
【裁判所の判断】
配転命令は無効
懲戒解雇も無効
【判例のポイント】
1 本件配転命令につきどの程度業務上の必要性があったかが不明確であるうえ、Y社がそのような配転命令をしたのは、むしろ、Y社が、Y社社長の経営に批判的なグループを代表する立場にあったなどの理由からXを快く思わず、Xを東京本社から排除し、あるいは、配転命令に応じられないXが退職することを期待するなどの不当な動機・目的を有していたが故であることが一応認められ、結局本件配転命令は配転命令権の濫用として無効というべきである。
2 本件解雇は、Xが本件配転命令に従わなかったことを主たる理由とするところ、本件配転命令が無効というべきであることは前記認定のとおりであり、また、Y社が主張する他の解雇事由についても、Xの勤務成績ないし勤務態度の不良をいう点については、本件疎明資料の限度では具体的解雇事由としてのそれを認めるには不十分であり、また、Y社や経営陣を誹謗中傷する文書を米国本社に送り続けたという点についても、これを認めるに足りる疎明資料はなく、結局本件解雇は正当な解雇事由の存しない無効なものというべきである。
本件は、仮処分事件ですが、賃金仮払いだけ認められています。
仮払期間は、1年間です。
やはり地位保全のほうはダメですね。
本件では、Y社が主張した配転命令の業務上の必要性について、裁判所はことごとく否定しています。
どうしても会社の主張は後付けになりがちなので、うそくさくなってしまうのです。
事前の準備が大切です。 気をつけましょう。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。