有期労働契約21(江崎グリコ事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

江崎グリコ事件(秋田地裁平成21年7月16日・労判988号20頁)

【事案の概要】

Y社は、菓子、食料品の製造及び売買等を目的とする会社である。

Xらは、Y社に営業担当従業員として採用され、以来1年ごとに契約を更新してきた。

Y社は、平成20年4月、Xらに対し、契約期間が満了する同年5月をもって雇用を打ち切る旨通告した。

その後、Y社とXらとの間で雇用の打ち切りについて交渉が行われ、雇用契約は、2ヶ月間、2度にわたって更新された。

しかし、Y社は、Xらに対し、同年12月、雇用契約を更新せず、雇用関係を終了させる旨通告した。

Xらは、本件雇止めは無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 有期の雇用契約において更新が繰り返されたときには、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になったと認められる場合、又は期間の定めのない契約と必ずしも同視できなくても雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性があると認められる場合には、雇用契約の反復更新後の雇止めには解雇権濫用法理が類推され、合理的な理由のない雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効となるというべきである

2 Xらは、Y社に採用されて以来、本件雇止めまで約15年間、合計16回にわたってY社から雇用契約を更新されているのであって、平成19年まではXらとY社との間で具体的な交渉もなく当然に雇用契約が更新されてきたこと、ストアセールスについて雇止めの前例はほとんどなかったことに照らせば、XらとY社との間の雇用契約は、形式的には期間の定めのあるものであったが、更新を繰り返すことが当然に予定されており、雇用継続に対するXの期待利益に合理性があると認められるから、本件雇止めの効力を判断するに当たっては、解雇権濫用法理が類推されるというべきである

3 Y社は、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推されるとしても、本件雇止めは整理解雇が有効とされるための要件を具備している旨主張する。
整理解雇が有効とされるためには、(1)人員削減の企業経営上の必要性、(2)整理解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)労使間における協議義務の履行等の手続の妥当性が必要であると解される。

4 Y社の売上高は年々減少傾向にあり、平成20年度には過去15年間で初めての営業損失を計上するに至っているなど、Y社の経営状態は相当程度悪化している。また、「標準コール数」で示されるY社の秋田事務所におけるストアセールスの仕事量は、訪問すべき店舗数や各店舗における活動可能な業務内容の減少等を反映して、平成20年2月の時点で5名の合計値が319.3と東北管内の他の県と比べると4名分程度の仕事量しかなく、本件雇止めが行われた同年12月の時点では5名の合計値255.4と3名分程度の仕事量しかなかった。
こうした状況に照らすと、本件雇止めの時点において、Y社の秋田事務所におけるストアセールス合計5名のうち、2名については人員を削減する企業経営上の必要性があったというべきである

しかしながら、Xら3名の本件雇止めのうち1名については、人員削減の必要性が認められず、解雇権濫用法理が類推適用されてその雇止めが無効となると解される。

本件は、整理解雇の雇止め版です。

裁判所は、4要件のうちの1つ目の要件である「人員削減の必要性」について一部否定しました。

ストアセールス5名のうち2名については削減の必要性があったという認定です。

特徴的なのは、「標準コール数」という数値を根拠として、「一部」については人員削減の必要性を肯定し、「一部」については否定したという点です。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。