おはようございます。
さて、今日は、タクシー乗務員に対する整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
ザ・キザン・ヒロ事件(東京高裁平成25年11月13日・労判1090号68頁)
【事案の概要】
本件は、タクシー運送事業を営むY社の足立営業所に、タクシー乗務員として勤務していたXらが、Y社がXらに対して行った整理解雇は解雇権を濫用した無効なものである旨主張して、Y社に対し、それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。
なお、一審(さいたま地裁平成25年7月30日)は、Xらの地位確認請求をいずれも認容した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
→整理解雇は無効
【判例のポイント】
1 本件解雇当時のY社の経営状況からみて、人員削減を含む抜本的な経営再建策を実行する必要性があったとは認められるものの、経営を再建するために直ちに事業の一部を売却して現金化するほかない状態にあったとまで認めることは困難であるから、足立営業所に勤務する乗務員の全員を解雇するほどの必要性があったということはできない。
したがって、Y社の上記主張は、採用することができない。
2 Y社は、足立営業所の従業員全員を解雇することを前提として、K社との間で事業用自動車譲渡契約又は事業譲渡契約を締結し、特段の解雇回避措置を採ることなく本件解雇を実行したものであり、本件解雇後、事業譲渡先であるK社にXらを含むY社の乗務員の情報を提供して雇用の要請をしたり、解雇された従業員の一部に対してK社への就職を勧誘するなどしたとしても、Xらの雇用確保のための措置として十分なものであったとはいえず、結局、Y社において解雇を回避するための十分な措置を採ったということはできない。
したがって、Y社の上記主張は、採用することができない。
3 本件解雇当時、Y社の経営を再建するために直ちに事業の一部を売却して現金化するほかない状態にあったとまで認めることが困難である以上、本件解雇における解雇人員の選定基準が合理的なものといえないことは、前記のとおりである。
したがって、Y社の上記主張は、採用することができない。
4 Y社が、K社との間で自動車若しくは事業の譲渡契約を締結し又はそのための交渉をしながら、それについて説明することなく突然足立営業所の従業員全員に対し解雇通告をしたこと、その後の説明会においても、事業譲渡について一切言及することなく抽象的な解雇理由に言及するに留まったこと、組合からの団体交渉の要求にも応じていないことなどに照らし、本件解雇について十分な説明・協議が行われたと認めることができないことは、前記のとおりである。
したがって、Y社の上記主張は、採用することができない。
整理解雇の要件(要素)を満たさないという判断です。
上記判例のポイントの1についてですが、会社とすれば、会社再建のため、やむを得ず事業譲渡をしたのだと思いますが、裁判所は、足立営業所の従業員全員を解雇するほどの必要性は認めませんでした。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。