労働時間38(ワールドビジョン事件)

おはようございます。 

さて、今日は、元従業員らの事業場外みなし時間制適用の可否について見ていきましょう。

ワールドビジョン事件(東京地裁平成24年10月30日・労判1090号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXらが、労基法37条所定の時間外労働を行ったとして、Y社に対し、時間外手当等の請求をした事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、X1に約120万円、X2に約70万円、X3に約120万円、X4に160万円を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、Xらは営業職であって勤務時間については自己責任で決めていたものであって、労働時間を算定し難いものであるから、労基法38条の2第1項による事業場外みなし規定の適用があると主張するが、Xら提出にかかる出勤表には、Y社事務所に出勤した場合の始業時刻、終業時刻のみならず、外勤により直行、直帰した場合の場所のみならず時刻(出発等の時刻と思われる。)等についても記載されているものであって、Y社が、従業員からこれらの出勤表の提出を受けることにより、Xらの労働時間を管理していたことは明らかである。この点に加え、Y社において、Xらの労働時間の算定が困難であることを基礎付ける事情についてそれ以上の主張、立証がないことに照らすと、Xらに労基法38条の2の事業場外みなし規定が適用される旨のY社主張を採用することはできないというべきである。

2 Y社は、残業については事前申告がなされた場合にのみ時間外手当が支払われることになっていると主張するが、正社員雇用勤務規則にも、明確にかような事前申告制を定める規定は存在しないことからすれば、Y社の主張を採用することはできない。
また、出勤表から認められる時間外労働の状況に照らすと、Xらの残業は恒常的な状況にあり、Y社もこのような状況を当然認識していたと認められるにもかかわらず、それを禁止したり抑制することなく推移した結果、そのような状態が継続していたものと認められるもので、Xらは、Y社の黙示の業務命令の下で時間外労働等を行っていたと認めるのが相当であって、この点からもY社の主張を容れる余地はない。Y社は、Xらの労働時間についてはその自主性に任せていたものであるとも主張するが、使用者には、従業員の労働時間を管理すべき義務があることにも照らすと、その自主性に委ねていることを理由に、時間外手当等の支払義務を免れると解することはできない

最高裁の考えからすれば、出勤表で労働時間を管理できていた以上、事業場外みなし労働時間性の適用を肯定することは難しいでしょうね。

また、使用者側とすれば、上記判例のポイント2は参考にすべき点ですね。

「自主性に任せていた」との主張は、使用者が労働時間を把握する義務を負っていることからすると、なかなか難しいわけです。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。