競業避止義務14(アフラック事件)

おはようございます。

自宅で仕事をしています。

さて、今日は、生保会社の執行役員の競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

アフラック事件(東京地裁平成22年9月30日・労判1024号86頁)

【事案の概要】

Y社は、生命及び疾病保険業を営む生命保険会社であり、アメリカ合唱国に本店を置いている。Y社は、特にがん保険及び医療保険については、保険業界内においてトップシェアを占めている。

Xは、Y社の執行役員であるが、平成22年9月末にY社を退職し、同年10月付けで、A生命に就職することが予定されている。

Xに係る執行役員契約書では、契約期間は1年間とされ、競業避止義務として、「Xは、執行役員の地位及び待遇に鑑み、在職中はもちろん本執行役員契約終了後2年間、Y社の業務と競業又は類似する業務を行う他社の役員、従業員にならないこと、及び、第三者をして競業又は類似する業務を行う他社を支援してはならないことに同意する。」旨の規定がある。

Y社は、Xに対して、A生命への就職を差し止める仮処分を申し立てた。

【裁判所の判断】

競業避止条項は有効であり、競業他社の取締役、執行役、執行役員の地位への就任、営業部門の業務への従事について差止請求を認めた。

【判例のポイント】

1 本件競業避止条項に係る合意は、不利益に対しては相当な代償措置が講じられており、A生命の取締役、執行役及び執行役員の業務並びに同社の営業部門の業務に関する競業行為をXが退職した日の翌日から1年間のみ禁止するものであると解する限りにおいて、その合理性を否定することはできず、Xの職業選択の自由を不当に害するものとまではいえないから、公序良俗に反して無効であるとは認められない。

2 競業行為の差止請求は、職業選択の自由を直接制限するものであり、退職した役員又は労働者に与える不利益が大きいことに加え、損害賠償請求のように現実の損害の発生、義務違反と損害との間の因果関係を要しないため、濫用のおそれがある。よって、競業行為の差止請求は、当該競業行為により使用者が営業上の利益を現に侵害され、又は侵害される具体的なおそれがあるときに限り、認められると解するのが相当である。

3 Xは、Y社の様々な営業上の秘密を把握している上、Y社の執行役員として、商品のマーケティング戦略を立て、企業系列の大規模な保険代理店などのマーケットに働きかけ、Y社に対抗し得る商品等の提案を行って営業活動を展開すれば、医療保険やがん保険等の商品について、Y社とA生命間のシェアを塗り替えることも可能となると考えられる。かかるシェアの奪取は、必ずしもX個人が単独で行い得るものではなく、A生命のマーケティング部門、営業管理企画部門及び戦略企画部門等の会社組織が一体となって行い得るものであるが、Xが保有するY社の営業上の秘密や保険代理店との高いレベルでの人的関係を利用した場合にはその効果が一段と発揮され、A生命がY社に対して優位な地位に立つことができる。これは、XがA生命に就職した後に新たに開発される保険商品等だけでなく、既存の保険商品等を利用又は改革し、営業活動を展開することによっても可能であるといえる。
よって、Xの競業行為によって、Y社の営業上の利益を侵害される具体的なおそれがあると一応認められる。

本件では、競業避止条項に対する代償措置として、Xに対して、5年間にわたって執行役員を務めたことによる退職金として、3000万円を超える金額が渡されています。

裁判所は、この点を重視しています。

5年間で3000万円オーバーです。 すごいですね。

また、Xが執行役員というポストにいた事実も、当然、重視されています。

もっとも、もし退職金がそれほど高額でなかったら、結論が変わっていたかもしれません。

会社としては、十分な代償措置を講じるという視点を持つとよいと思います。

なお、執行役員契約書では、競業避止期間は2年間と定められていましたが、裁判所は1年間に限定しています。

さすがに2年は長いということです。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。