おはようございます。
さて、今日は、「事業上の都合」を理由とする解雇の有効性と反訴立替金請求に関する裁判例を見てみましょう。
大阪運輸振興(解雇)事件(大阪地裁平成25年11月15日・労判1089号91頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であるXが、Y社から解雇されたが、当該解雇は無効であるとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認および解雇後の賃金の支払いを求めた事案、ならびに、Y社が、Xを解雇したことにより、社会保険料の従業員負担分の一部を賃金から控除することができなかったため、Y社がXに代わって従業員負担分も支払ったとして、当該立替金の返還を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇は無効
立替金請求は棄却
【判例のポイント】
1 本件雇用契約に職種限定の合意があったとは認められず、また、Xの勤務態度に問題がなかったことは当事者間に争いがないから、本件解雇は、いわゆる整理解雇に当たるというべきであり、本件解雇が有効か否かは、①人員削減の必要性、②解雇回避努力の有無、③人選の合理性及び④手続の相当性を総合して判断すべきである。そして、本件解雇が有効といえるためには、Y社において、少なくとも、人員削減の必要があること、解雇回避努力を尽くしたこと及び解雇者の人選が合理的であったことを主張・立証する必要があると解される。
2 この点、確かに、本件解雇は、A駅B操車場における操車場業務の廃止に伴うものであり、Y社は、Xに対し、自動車運転手、路線施設維持管理業務、自動車倉庫業務又は車両手入業務の4つの業務への配転を打診し、Xは、持病により自動車の運転ができないことを理由に自動車運転手、路線施設管理業務及び車両手入業務への配転は不可能であると回答していることは認められる。しかし、それ以外の事務職等への配転の可否等の解雇回避努力の有無、人選の合理性については、Y社代表者が、抽象的に事務職に馴染まないと判断した、事務職も定数を満たしているなどと供述するに止まっており、Xについて、他に従事しうる業務がなかったことを具体的、客観的に裏付ける証拠は提出されていないところ、Y社は、本件解雇に整理解雇法理の適用はないとして、これらの点について主張・立証しない態度を明らかにしている。
以上のように、Y社が、本件解雇の有効性を基礎付ける評価根拠事実について主張・立証しない以上、本件解雇は無効であるといわざるを得ない。
3 なお、Y社は、本件雇用契約について職種限定の合意がないとすれば、Xが配転を拒否したことになると主張するが、Y社は、あくまで上記の4つの業務への配転を打診したに止まっており、Y社が配転を命じ、Xがこれを拒否したとまではいえないから(なお、自動車倉庫業務については、期間の定めのない雇用契約から期間雇用への契約変更の打診であって、配転命令には当たらないというべきである。)、この点に関するY社の主張も採用できない。
整理解雇のハードルの高さがよくわかりますね。
特に、使用者側としては、上記判例のポイント2は注意が必要です。
職種に関する抽象的な「向き・不向き」を根拠に配転の機会を与えないことは避けなければなりません。
現実には、かなり厳しいとは思いますが。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。