不当労働行為12(田中酸素事件)

おはようございます。

さて、今日は、配転・出勤停止処分と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

田中酸素事件(中労委平成23年1月19日・労判1022号87号)

【事案の概要】

Y社は、従業員役60名をもって、高圧ガス製造販売および建設機材のリース販売等を行っている。

X組合の執行委員長Aは、平成8年7月、Y社に入社し、平成13年8月から本社のリース部門の業務に従事してきた。

平成20年12月、Y社は、Aに対し、Y社会長に対する暴言等職場の秩序を乱したこと、上長の注意、指示、命令に従わないことなどを理由に6日間の出勤停止処分に付した。

平成21年1月、Y社はAに対し、小野田営業所へ配転する旨命じた。小野田営業所は、本社から車で10分程度の距離にある。

配転後のAは、主として足場材等洗浄作業に従事している。

Aは、本件出勤停止処分と配転は、不当労働行為にあたるとして争った。

【労働委員会の判断】

出勤停止処分・配転ともに不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社は、本件リース部門が配達業務等に人手を要しない状態にあったとまではいえず、また、Aの業務遂行能力は若干の指導、補助等を補っても通常の業務遂行に耐えない程度にまで失われ又は欠落していたとはいえないにもかかわらず、Aを敢えて本社リース部門に復帰させず、本件配転により、Aを更なる人手を要する状態にあったとはいえない小野田営業所に配転したということができる

2 そうすると、本件リース部門が業務を縮小したこと、Aが長期間離職していたことを考慮しても、本件配転の合理性には疑問が残るといわなければならない

3 本件配転の合理性に疑問が残ることに加え、Aは、X組合の執行委員長であること、X組合は、結成以来ほぼ恒常的にY社と対立、緊張関係にあったこと、Y社が、第1次解雇の後もAを再度解雇し、第2次解雇が無効であることを前提とする判決が確定するや、Aの弁明等を聴取せずに本件処分を行い、同様にAの意向等を事前に聴取しないで本件配転を行ったことが認められる。

4 これらの事情に照らすと、Y社は、X組合の執行委員長であるA及び同人ら組合活動を嫌悪し、同人を本社から排除し、精神的ないし職業上の不利益を与えるとともに、A及び組合の会社及び他の従業員に対する影響力を減殺する意図をもって本件配転に及んだと認めるのが相当である。
以上検討したところによれば、Y社は、A及び同人らの組合活動を嫌悪し、・・・本件配転を行ったと認められるから、本件配転は、労組法7条1号の不当労働行為に当たる

この命令の内容を見てもわかるとおり、結局、不当労働行為に該当するか否かについては、特別な判断基準があるわけではないのです。

配転が合理的理由に基づいていないといえ、その当事者が組合員であると、不当労働行為に該当する可能性が出てくるわけです。

まして、今回、Aは、X組合の執行委員長です。

会社としては、やり方を考えないと、このような結果になってしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。