おはようございます。
さて、今日は、誠実交渉義務と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
島田理化工業事件(静岡県労委平成23年1月27日・労判1022号86頁)
【事案の概要】
Y社は、東京都内に本社および東京製作所を、静岡県内に島田製作所を、福岡県等に営業拠点を置き、電気機器の製造販売を行っている。
平成21年4月、Y社は、X組合に対して、島田製作所(従業員数約200名)を閉鎖し、同製作所で行っていた洗浄装置事業を終息させ、高周波応用機器事業を東京製作所に集約し、180名の希望退職を募集する旨の経営再建プランを説明した。
Y社と支部は、経営再建プランに関して同年8月までに8回の団交のほか事務折衝を行った。その間の6月、Y社は、支部に対して「経営再建プランにおける人員関連施策内容」と題し、再就職あっせん、希望退職、高周波事業の東京地区移転に伴う配転、個別面談について説明する文書を送付した。
また、7月、Y社は、支部に対して高周波事業の東京地区への移転計画、再就職のあっせん及び希望退職者のスケジュールを説明した。
8月の団交において、Y社は、議論は平行線でこれ以上の交渉の進展が困難であるとして、経営マターの協議を打ち切りたい、希望退職募集について労使の合意は必要ないと述べた。
Y社は、7月に説明したとおり、10月に希望退職を募集した。
X組合は、団交におけるY社の対応が誠実交渉義務に違反すると主張し争った。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にはあたらない
【命令のポイント】
1 島田製作所の閉鎖に関する事項等並びに人員関連施策としての希望退職の募集に関する事項及び高周波事業従事者の東京地区への転任に関する事項のうち、島田製作所の閉鎖に関する事項等はY社の事業の廃止・移管という経営・生産に関する事項であり、そこから生じる労働条件問題の交渉の中で議論されるべきことはあっても、それ自体としては義務的団交事項に当たるということはできない。
2 しかし、経営再建プランの実施に伴う希望退職の募集は、労働者の雇用そのものにかかわることであり、応募する労働者にとっては退職金などの労働条件を含むものであり、また、応募しない労働者にとってもその労働条件に影響を及ぼすことであるので義務的団交事項である。また、高周波事業従事者の東京地区への転任に関する事項は、高周波業務部門全体の東京地区への異動であり、集団的な職場の変更であるので、義務的団交事項である。
3 希望退職募集に関しては、経営再建プラン発表後、募集までに、6回の団体交渉のほか事務折衝も行われ、その間に、Y社は、資料を提示して希望退職募集に至った経営状況を説明している。
4 経営再建プランに係る島田製作所の閉鎖に関する事項等自体は、事前協議事項や義務的団交事項とは認められず、同プランに係る人員関連施設としての希望退職の募集に関する事項及び講習は事業従事者の東京地区への転任に関する事項については、Y社は誠実に団体交渉を行っていたと認められることから、不当労働行為には該当しない。
地元静岡の事件です。
同命令では、労使間の事前協議中に希望退職を募集したことは、不当労働行為には当たらないと判断されています。
本件では、Y社は、誠実交渉義務を尽くしているといえ、結論は、妥当であると思います。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。