管理監督者20(レイズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

レイズ事件(東京地裁平成22年10月27日・労判1021号39頁)

【事案の概要】

Y社は、不動産業を営む会社である。

Xは、Y社に採用され、その後、解雇された。解雇時は、営業本部長の地位にあった。

Xは、解雇後、Y社に対し、時間外・休日労働にかかる未払賃金の支払いを求めた。

これに対し、Y社は、Xが管理監督者にあたること、事業場外みなし制度が適用されることなどを主張し、争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

事業場外みなし制度の適用も否定

【判例のポイント】

1 労働基準法41条は、同条2号に掲げる「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には、労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定を適用しない旨を定めているところ、その趣旨は、同法の定める労働時間規制を超えて活動することが、その重要な職務と責任から求められる者であり、かつ、その職務内容(権限・責任)や現実の勤務態様等に照らし、労働時間規制を除外しても、同法1条の基本理念や同法37条の趣旨に反するような事態が避けられる(労働者保護に欠けることにはならない)ということにあり、行政通達が、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にある者をいい、その名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであるなどとしているのも、前記趣旨に沿ったものと解される。

2 そして、同通達の内容をも踏まえると、管理監督者に該当するかどうかについては、(1)その職務内容、権限及び責任が、どのように企業の事業経営に関与するものであるのか(例えば、その職務内容が、ある部門全体の統括的なものであるかなど)、(2)企業の労務管理にどのように関与しているのか(例えば、部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していたり、部下の人事考課、機密事項等に接したりしているかなど)、(3)その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか(例えば、出退勤を規制しておらず、自ら決定し得る権限があるかなど)、(4)管理職手当等の特別手当が支給されており、管理監督者にふさわしい待遇がされているか(例えば、同手当の金額が想定できる時間外労働に対する手当と遜色がないものであるかなど)といった視点から、個別具体的な検討を行い、これら事情を総合考慮して判断するのが相当である。

3 Xは、Y社において「営業本部長」という肩書は有しているものの、その業務内容は、基本的には営業活動であり、(宅地建物取引主任者の資格を活用する点、より重い営業ノルマ等を課されている点は別論として)他の一般社員(営業担当社員)と異なるところはなかったものと解される。

4 Xは、原則として、午前9時前後にはY社に出社して、タイムカードに打刻し、Y社を退社する際もタイムカードに打刻していたこと、Y社は週休2日制であるにもかかわらず、Xが週2日の休日を取得することはあまりなかったことが認められ、Xは勤務時間(出退勤)について自由裁量はなかったものと強く推認されるといわざるを得ない。

5 Xが部下の査定に実質的に関与していたと認めることはできない

6 Y社は、Xに支給されている報奨金等の多寡をも問題としているが、報奨金は、基本的には、従業員の立場等とは関係なく、契約を成立させた事実に対して支給されるものであり、その多寡が直ちに管理監督者性を基礎付けるものであるとは解し難い。

本裁判例では、管理監督者性の問題のほかに、事業場外みなし労働時間制の適用の有無についても争点となっています。

この点は、また別の機会に検討します。

管理監督者性の問題で、会社側の主張が通ることはほとんどありません。

理由は簡単です。

基準が厳しいことと、会社が、都合よく管理監督者と認定しすぎていることです。

裁判所の示す基準をすべてみたす管理職は、ほとんど存在しないと思います。

会社としては、この問題を放置しておくと、本裁判例のように、いつか時間外・休日労働の未払賃金を請求されたときに、多額の出費をしなければなりません。

このあたりは、実質的な損得の判断が求められています。

「訴訟リスク」「敗訴リスク」を実質的に判断しましょう。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。