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さて、今日は、派遣労働者らの時間管理について派遣先会社に団交応諾義務があるかについての裁判例を見てみましょう。
H交通社事件(東京地裁平成25年12月5日・労経速2201号3頁)
【事案の概要】
Y社は、その100%子会社であるA社から添乗員の派遣を受け入れていたところ、X組合から、労働時間の管理等の事項に関する団体交渉を申し入れられたものの、これらをいずれも拒否した。
X組合は、東京都労働委員会に対し、本件団交拒否が不当労働行為に当たるとして、救済命令を申し立てた。
都労委は、Y社に対し、団交に誠実に応じなければならない旨等を命じた。Y社は中労委に対し、再審査申立てをしたが、棄却した。
本件は、Y社が、本件命令の取消しを求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 労働者派遣法の原則的な枠組みにおいては、派遣労働者の労働条件は、基本的には、雇用関係のある派遣元事業主と派遣労働者の間で決定されるものであるから、基本的な労働条件等に関する団体交渉は、派遣元事業主と派遣労働者で組織する労働組合の間で行われ、また派遣先事業主に対する要求は、同法40条1項の苦情処理手続において処理されるべきものであって、派遣先事業主は、原則として、労組法7条の使用者には当たらないと解するのが相当である。
2 もっとも、労働者派遣が、前記労働者派遣法の原則的枠組みによらない場合、例えば、労働者派遣が、前記労働者派遣法の原則的枠組みを超えて遂行され、派遣先事業主が、派遣労働者の基本的労働条件を現実かつ具体的に支配・決定している場合のほか、派遣先事業主が同法44条ないし47条の2の規定により、使用者とみなされ労基法等による責任を負うとされる労働時間、休憩、休日等の規定に違反し、かつ部分的とはいえ雇用主と同視できる程度に派遣労働者の基本的な労働条件等を現実的かつ具体的に支配、決定していると認められる場合には、当該決定されている労働条件等に限り、労組法7条の使用者に該当するというべきである。
3 労働時間管理は、それ自体としては経営管理に関する事項というべきであるが、労働時間という基本的な労働条件の管理に関する事項であり、その管理のあり方によって、実労働時間の把握・算定、ひいては割増賃金等の扱いに大きな影響を及ぼす事項である。また、使用者は、労働時間、休憩、休日に関する労基法32条等の規定を遵守する義務を負うところ、その前提として、労働者の始業、終業の各時刻を把握し、労働時間を管理する義務を負うものというべきであるし、労働者派遣法44条2項によれば、派遣労働者の派遣就業に関し、労働時間、休憩、休日に関する労基法32条等の規定の適用については、派遣先事業のみを、派遣労働者を使用する事業とみなすこととなるから、派遣先事業主は、派遣労働者の始業、終業の各時刻を把握し、労働時間を管理する義務を負うものと解するのが相当である。
そうすると、本件団交事項のうち、労働時間管理に関する部分は、義務的団交事項に当たると解するのが相当である。
派遣先会社のみなさんは、上記判例のポイント3を頭に入れておきましょう。
派遣社員と雇用関係にないというだけで、当然に団交応諾義務が発生しないと考えると間違えますので、注意が必要です。
団交の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。