おはようございます。
さて、今日は、懲戒免職処分取消後の未払給与に対する遅延損害金請求に関する裁判例を見てみましょう。
秋田県(県立高校職員)事件(秋田地裁平成25年3月29日・労判1083号81頁)
【事案の概要】
本件は、秋田県の公務員であり、酒気帯び運転により懲戒免職処分を受けたXが、別件訴訟において当該懲戒免職処分が取り消された後、秋田県から未払分の給与の支払いを受けたが、当該給与には遅延損害金が付与されていなかったとして、秋田県に対し、秋田県が制定する条例および規則に基づき当該給与の支給日の翌日から当該給与に対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 本件のような金銭債権をめぐる債権債務関係、すなわち未払給与に対する遅延損害金の付与の要否及びその発生時期の判断に当たっては、民法を適用し、民法に基づき解釈するのが相当である。
2 本件においては、本件懲戒免職処分が取り消されたことによって、秋田県には給与である金銭をXに給付すべき債務に不履行が認められることから、民法419条、404条に基づき、秋田県は、Xに対し、未払の給与に対しては年5分の割合による遅延損害金を付与すべきこととなる。
3 その上で、未払の給与に対していつから遅延損害金を付与すべきかについては、履行期と履行遅滞について規定した民法412条に基づき判断されるところ、Xは、本件条例等によって給与の支給日が規定されている以上、民法412条1項に基づき、当該支給日の翌日から遅延損害金が発生する旨主張する一方、秋田県は、本県条例等には遅延損害金の履行期に関する規定はない以上、民法412条3項に基づき、秋田県が未払の給与の履行の請求を受けた時から遅延損害金が発生する旨主張する。
そこで検討するに、・・・本件条例等には、懲戒免職処分が取り消された場合の給与の支払いについても明示的な規定はないにもかかわらず、本件においてはXには未払の給与が支給されたが、これは本件懲戒免職処分が取り消され、Xがその身分を回復した結果、Xには本件懲戒免職処分の日に遡って本件条例等が適用され、本県条例等に基づき未払の給与の支払いがされたからにほかならない。そして、懲戒免職処分が取り消された場合における給与の支払いと当該給与の履行期について、本件条例等の適用において別異に解すべき合理的理由はないことからすれば、本件懲戒免職処分が取り消された場合の未払の給与の支払いと同様に、当該未払給与の履行期についても、本県条例等が適用されると解するのが相当である。
したがって、本件においては、本件懲戒免職処分が取り消された後に支払われた未払の給与には、民法412条1項に基づき、本件条例等に定められている支給日が到来した時、すなわち支給日の翌日から遅延損害金を付与すべきこととなる。
県側の主張は、なかなか厳しいものがあります。
普通に考えれば、裁判所の判断が妥当であることは明らかでしょう。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。