労働者性9(ソクハイ事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、メッセンジャーの労基法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

ソクハイ事件(東京地裁平成25年9月26日・労経速2198号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、「運送請負契約書」、「業務委託契約書」と題する契約を順次締結し、バイシクルメッセンジャーとして稼働していたXらが、Xらは、Y社から契約終了を告知されたが、(1)Xらは労働基準法上の労働者であり、X・Y社間の上記契約はいずれも労働契約に該当するから、同契約終了の告知は解雇に当たるところ、同解雇は理由がなく無効であって、同解雇により精神的苦痛も受けたなどと主張し争った事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・以上によれば、本件業務委託契約書の規定内容は、Y社の配送業務の請負に関する約定であると認められるところ、その使用従属性については、メッセンジャーが稼働日・稼働時間を自ら決定することができ、配送依頼を拒否することも妨げておらず、その自由度は比較的高いことY社がメッセンジャーに対し、一定の指示をしていることは認められるが、これらは受託業務の性質によるところが大きく、使用従属関係を肯認する事情として積極的に評価すべきものがあるとはいえないこと拘束性の程度も強いものとはいえないことを指摘することができ、これをたやすく肯認することはできない。そして、メッセンジャーの報酬の労務対償性についても、労働契約関係に特有なほどにこれがあると認めることは困難である。もとより、メッセンジャーの事業者性が高いとまで評価することができないことは上記説示のとおりであるが、さりとてメッセンジャーの事業者性がないともいえず、また、専属性があるともいえず、むしろ、上記のとおり稼働時間を含めてメッセンジャーが比較的自由にこれを決定し、労働力を処分できたと評価し得ることに照らせば、少なくとも本件契約2締結後のXらメッセンジャーについて、労基法上の労働者に該当すると評価することは相当ではないというべきである(なお、Y社のメッセンジャーについて、労組法3条、7条所定の労働者に当たるとした当裁判所の判断があることは上記のとおりであるところ、上記認定事実によれば、本件契約2締結後においてもXらメッセンジャーはY社の事業組織に組み込まれ、個々の業務依頼を基本的には引き受けるべきことが想定はされていたこと、時間・場所・態様の各面につき、一定程度の拘束性があったことが否定されるものでもないこと等を指摘することができるところであり、これらの点に照らせば、本件業務委託契約締結後においても、Xらメッセンジャーが同法3条、7条所定の労働者に当たることまでは否定されないと解される。しかし、同法所定の労働者に該当するか否かは、同法の目的(同法1条1項)に照らし、団体交渉によって問題を解決することが適切な関係にあるか否かといった観点から検討されるべきものであり、労働力の提供を強制される立場にある労基法上の労働者に対する種々の保護に関して規定するところの労基法ないし労契法所定の労働者の該当性の判断の在り方との間で、自ずと差異が生ずることを否定することはできず、Xらメッセンジャーが労組法3条、7条所定の労働者に当たるからいって直ちに労基法上の労働者に該当するということにはならない。)。

2 以上によれば、XらとY社との間で締結した本件契約2において、メッセンジャーが労基法上の労働者に当たるとはいえず、同契約が労働契約であるとはいえない。したがって、その解消ないし打ち切りに解雇権濫用法理の適用(労契法16条参照)があるということもできず、これを前提とするXらの主位的請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも肯認することができない。

メッセンジャーの労組法上の労働者性が争われた裁判例は、こちらを参照。

労組法と労基法(労契法)では、法の目的が異なる以上、各法律における労働者の定義が異なることはおかしい話ではありません。

労働者性(の問題に限りませんが)については、複数の要素の総合考慮により判断されるため、この裁判例のいいとこどりをしようとしても、うまくいきません。

トータルで物事を考えなければうまくはいかないのです。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。