不当労働行為85(サントス事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合加入直後に自宅待機を命じた後、懲戒解雇したことの不当労働行為性について見ていきましょう。

サントス事件(神奈川県労委平成25年9月20日・労判1080号93頁)

【事案の概要】

Y社は、一般貨物自動車運送事業等を営む会社である。

Y社の従業員であるAおよびBが組合に加入したところ、Y社はAおよびBを自宅待機を命じた。

その理由としては、Aは8月配転および2月配転について取引先に内容を告知し、会社の人事労務管理について不満を述べたこと(A懲戒理由①)、上司である所長に暴言を吐き、脅迫したこと(A懲戒理由②)を、Bは物損事故について損害金を支払わず(B懲戒理由①)、事故の反省、謝罪をしないこと(B懲戒理由②)などをあげている。

Y社は、その後、AおよびBに対して懲戒解雇を通知し、その理由として、上記自宅待機の理由に付加して、自宅待機命令に反して出社を継続したこと(A懲戒理由③)をあげている。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Aが本件自宅待機命令を受けた後も本件懲戒解雇に至るまで出社を継続したのは、そもそも合理性を欠く本件自宅待機命令を認めない意思を表すためであり、また、Y社が自宅待機期間中にその理由を十分に説明していないことを併せ考えると、Aが出社を継続したことを本件懲戒解雇の理由とした③に合理性は認められない

2 Bが本件物損事故を起こし、会社の従業員に損害を与えたものの、その損害金を支払っていないことに争いはない。しかし、その損害金の支払についてBが同意したことを認めるに足りる証拠はなく、したがって、本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇の理由である①に合理性は認められない

3 本件懲戒解雇は、A、B外2名による分会結成後間もなく両名同時に行われた結果、分会の中心人物であるAとBは社外に排除され、分会員が4名から2名に半減している。また、本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇によって示された会社の分会に対する厳しい態度は、結成されたばかりの分会の勢力拡大に影響を及ぼしたものと推認することができる。したがって、本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇は、分会の運営に対する干渉行為である。
・・・本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇は、A及びBが組合員であること又は正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱いであり、法第7条第1号に該当する不当労働行為であると判断する。

これも不当労働行為性が明らかな事例です。

上記命令のポイント3を読むだけで、会社の組合嫌悪の意思がよくわかります。

使用者側は、顧問弁護士の指示のもとで適切な対応をとることをおすすめします。

どんなときでも、信頼できるブレーンの意見に耳を傾けられる経営者でありたいですね。